女性差別というロックの悪しき伝統を覆す、フィービー・ブリジャーズによる「ギター破壊」の意味

2月6日、SNLでギター破壊パフォーマンスを見せたフィービー・ブリジャーズ(Instagramより引用)

先日、「サタデー・ナイト・ライブ」に出演した彼女は、ロックの世界ですっかりおなじみのパフォーマンスを体現することで、それまでの常識を覆してみせた。これぞまさしくフィービー・ブリジャーズ。激しい議論が巻き起こったが、怯む様子はまったく見せていない。

【動画を見る】フィービー・ブリジャーズの怪演、ギター破壊は4分過ぎ〜

2月6日、『サタデー・ナイト・ライブ』に出演したフィービー・ブリジャーズはパフォーマンスの締めくくりに、ステージ上でギターを壊そうとした――世紀末的な激しいフォークロックソング「I Know the End」のフィナーレにはぴったりだった。フィービーは『ロンドン・コーリング』のジャケ写さながらに、足元にスモークを漂わせ、スケルトン風にあしらわれた衣装のパールを前後に揺らしながら、Danelectro Dano 56年モデルのバリトンギターを粉砕しにかかった。だが結局ギターを壊すのは見た目以上に相当難しいことを証明しただけで、彼女は何度も何度もアンプに楽器を打ち付けた後、しまいには床に投げつけたが、ギターはほとんど無傷だった。ドラマチックな予想外の出来事だった。当然、インターネットの民は激怒した。

「このフィービー・ブリジャーズという女は、なぜSNLでギターを壊したんだ?」というツイートを皮切りに、Twitterでは週末激しい議論が巻き起こった。「曲にもたいして興味はわかなかったが、あれは余計じゃないか」。すぐさま大勢がフィービーの弁護に回った。そのうちの1人ジェイソン・イズベルさんは、問題のギターは比較的安価で85ドルぐらいだと指摘した(「Danelectroの会社にも事前に壊すことを伝えていたの」と、フィービーはイズベルさんに返信した。「そしたら、せいぜい頑張ってください、壊すのは大変ですよって言われたわ」)。

ネット上の怒りは明らかに行き過ぎだ――とりわけ彼女以前にも数多の男性たちが楽器を壊し、女性ミュージシャンがそれに倣って同じことをしたという事実を考えれば。ピート・タウンゼントは60年代初期にうっかりギターを壊したが、以来それが彼のトレードマークになり、ローリングストーン誌にギターの壊し方の手ほどきをしているほどだ。1967年のモントレー・ポップでジミ・ヘンドリックスがストラトキャスターに火をつけたのは有名な話だし、カート・コバーンはクラフト社のレトルト・マカロニチーズを食べるかのように、頻繁にギターを粉々にしていた。こうした男性陣が当時、ある程度のお叱りを受けていた可能性もあるが、今回のように上から目線で「このエディ・ヴァン・ヘイレンという男は、なぜにまたギターを壊したんだろう?」と言われたとは思えない。

Translated by Akiko Kato

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