ファーストサマーウイカが語る、「何も極めていない」からこその強さと変わらぬ音楽愛

ーそういう中で、阿部真央さんがウイカさんのためにソロデビュー曲「カメレオン」を書き下ろしました。ウイカさんが考えていること、思っていることを阿部さんが汲み取って作られた曲だと思うんですが、阿部さんに楽曲制作をお願いされた経緯を教えてください。

私自身は曲も書けないし、歌詞を書いてもどこかでかっこつけたり、見せ方を考えてしまうと思ったんです。なので、どなたに楽曲提供していただこうと考えた時に、阿部真央さんは私が高校生の頃から好きだったし、抜群に歌が上手くて、ロックでかっこいいし、変わらず第一線でいい歌を書き続けている方で。阿部真央さんみたいに等身大で嘘がない曲を書ける人が、他己紹介的に曲を書いてくれたら、より私の本質が出るかなと思いました。

ー曲を作るにあたって、阿部真央さんとはどんなやりとりがあったんでしょう?

真央さんは取材のように一対一でヒアリングしてくださって。最初の顔合わせの時からメモを取りながら「こういう状況でウイカちゃんはどう感じる? どういう考え方なの?」と、細かいところまで見てくださいました。それ以降も2人でゆっくり話して、歌詞が書き上がってからもさらにディスカッションしたり、試行錯誤してくださいました。だから、今回の曲はかなり私のことを書いてくれたと思います。真央さん自身も「私とウイカちゃんは結構似てる部分も多いから、自分のことも書いちゃった」と仰っていて。私たち二人の歌詞でもあるし、皆が日常的に思ってること、秘めているようなこと。これは私の考察ですが、対人関係での多面性とか、上辺だけで判断されたりとか、SNSと現実での人格の乖離への思いなんかの要素も含まれていているのではないかと。大変興味深かったです。


ファーストサマーウイカ

ー実際、ウイカさんのイメージ通りの曲ができましたか?

私は最初、ポジティブなメッセージで会場が盛り上がるような曲、阿部真央さんの曲で言えば「モットー。」や「ふりぃ」みたいなイメージで相談させてもらったんです。でも、真央さんがヒアリングを重ねた後に「ウイカちゃんの曲を描こうと思ったら、こうにしかならなかった」とおっしゃって、私が思っていたのと真逆なちょっとダークで、心の内を激しく突きつけるような曲を作られたのは意外でした。もちろん、真央さんならオーダー通りに作ることもできたと思うんです。でも、真央さんが「ファーストサマーウイカ」という人間を掘り起こし組み立てたとき、この「カメレオン」の像が見えた、これを私に歌ってほしいと強く言ってくれました。その言葉が本当に嬉しくて、真央さんの気持ちと歌詞の力に、自然と涙が出ました。

ーウイカさん自身が描いていたイメージと、真央さんが客観的に捉えたイメージでは、生まれてくるものがだいぶ違ったんですね。

皆で元気になれるという私のオーダーは、結局上っ面で描くアーティスト像に過ぎなくて、ファーストサマーウイカの本質や気持ちを出す考えには至ってなかったなと思うんです。でも、真央さんは「自分の本質を出せないと、アーティストをやる意味ないじゃん」と仰っていて。元気な感じはラジオとかテレビでも出しているし、私という人間はどういう考えを持っていて、どういうことに頭を悩ませているかを吐露する機会はあまりなかったので。こういうインタビューで話すような内容を、曲に乗せて出すことがアーティストなんじゃないか? と、認識を変えてもらえたんです。嘘のないアーティスト人生を歩んできた阿部真央さんだからこそ、他の人にもそういう曲を書けるんだと思って感服しました。

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