WONK江﨑文武が語る、巨匠エンニオ・モリコーネの音楽愛と果敢な実験精神

「もう父がいないなんて寂しい」。息子が語る父としてのモリコーネ

江﨑:続いてマルコさんに、お父様との印象に残っているエピソードをお聞きしたいです。

マルコ:父との思い出はたくさんあるけれど、その中から少しシェアするよ。ジェノバで再建された新しいモランディ橋の落成を祝う作品を、父が作っていた時のことはよく覚えている。それが父の最後の作品となったからね。子どもの頃、学校が終わるとレコーディングスタジオへ父に連れて行かれたことも懐かしい。そこで何が行われていたのか当時はよくわかっていなかったから、ミュージシャンではなく父としてのエンニオと一緒にいることを楽しんでいたよ。

そして1970年代、父が映画『死刑台のメロディ』のサウンドトラックに取り掛かっていた時、私たちはジョーン・バエズに会いにサン=トロペを訪ねた。彼女には6か月の息子がいて、その子をプールに入れて泳がせていたのを覚えているよ。その日父は映画のテーマ曲“勝利への賛歌”を書き終えて、彼女が紙切れに歌詞と小さな花のスケッチを書いていた。その紙のコピーは私のスタジオにまだ飾ってあるよ。

毎朝のルーティンも覚えている。父はアパートメントで私の部屋の上に住んでいて、私たちは毎朝一緒にコーヒーを飲んでいたんだ。もう父がいないなんて寂しいよ。今は母と一緒に毎朝コーヒーを飲んでいるけれど、かつてはその場に父もいたわけだからね。でも、それが人生(Que Sera, Sera)さ。


ジョーン・バエズ「Here’s to You」(『死刑台のメロディ』より)




エンニオ・モリコーネ
『モリコーネの秘密』

収録曲
01.来て (別テイク) – 映画『愛と性の時』(QUANDO L’AMORE e SENSUALITA)
02.グロテスクな幽霊 (ニュー・エディット) – STARK SYSTEM
03.人生の光と影 – 映画「恐るべき少女たち/報告・イタリア版転落の詩 」(STORIE DI VITA E MALAVITA)
04.乳房とアンテナ、屋根とスカート – LA SMAGLIATURA
05.パトリツィア (別テイク) – 映画『別れ』(INCONTRO)
06.ダリラのために –映画『フランコ・ネロ/強奪 インサイダー』( IL BANDITO DAGLI OCCHI AZZURRI)
07.18 Pari – 映画『ザ・ビッグマン』(UN UOMO DA RISPETTARE)
08.サイケデリック・ムード – LUI PER LEI
09.逃げる – L’AUTOMOBILE
10.サイケデリック・ジュークボックス – 映画『恐怖に襲われた街』(PEUR SUR LA VILLE)
11.作られた恐怖 – 映画『Weak Spot』(LA SMAGLIATURA)
12.黙り込むエッダ – LUI PER LEI
13.そんなのありえない – 映画『My Dear Killer』MIO CARO ASSASSINO
14.イート・イット (シングル・ヴァージョン) – EAT IT
15.隠された闇 –映画『愛と性の時』(QUANDO L’AMORE e SENSUALITA)
16.私たちのドラマ – 映画『略奪しろ、抵抗せよ、殺せ! 』(SPOGLIATI, PROTESTA, UCCIDI )
17.彼女のために彼がいる – SENZA SAPERE NIENTE DI LEI
18.車輪のビート – L’AUTOMOBILE
19.スターク・システム (ロック・バージョン) – STARK SYSTEM
20.シチリア人の一族 (テーマ No. 5) - 映画『シシリアン』(IL CLAN DEI SICILIANI) –
21.ルネ・ラ・カンネ – 映画『シルビア・クリステルの ピンク泥棒』(RENE LA CANNE) –
22.午後10時 – SAN BABILA ORE 20: UN DELITTO INUTILE
23.暗闇でスリップ – 映画『UCCIDETE IL VITELLO GRASSO E ARROSTITELO』※日本盤限定ボーナス・トラック
24.街のシンフォニー - Seq. 4 – 映画『コップキラー』COPKILLER
25.割り当て – 映画『ザ・ビッグマン』(UN UOMO DA RISPETTARE)
26.不道徳 (New Edit) – L’IMMORALITA
27.致命的な追求 – 映画『Black Belly of the Tarantula』(LA TARANTOLA DAL VENTRE NERO)–
28.黒点 (シングル・ヴァージョン) – 映画『炎のいけにえ』(MACCHIE SOLARI)

詳細:https://www.universal-music.co.jp/ennio-morricone/

Edited by Aiko Iijima

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