THE BLUE HEARTSを読む、悲しみと孤独から始まった人の絆を歌ったバンド

そして陣野さんが、2枚目のアルバム『YOUNG AND PRETTY』の中で、これこそ真に注目されるべき曲ではないかと挙げた曲があります。「レストラン」

レストラン / THE BLUE HEARTS

この曲も作詞作曲がヒロトさんですね。本の中でこの歌詞が引用されていた時に、こんな曲あったかな と思いました。音楽ライターや評論家がTHE BLUE HEARTSを書くとしたら、この曲はあまり取り上げられないかもしれない。こんなに何気ない歌なのですが、面白いですね。歌の中に主語がない。「カツ丼 サラダ 冷奴」と人間の食べ物が歌われているのですが、「明日保健所が来たら」という歌詞があって、人間の歌じゃないのか? と思わせられます。歌の中で「僕たちは保健所に捨てられちゃう」と歌ってる。つまり、人間じゃなくて食べ物側に立っているようにも思える。残飯の歌。でも、その後に、交差点で轢き逃げされるという歌詞が出てくるんですよ。それを見て、皆が笑っている。これは交差点で轢き逃げされる、残り物を漁る動物の歌なんだとしたら、ドブネズミの歌かと解釈できるわけです。先ほどお聴きいただいた「ロクデナシ」とこの「レストラン」は同じことを歌っているんだな、と改めて思わせてくれますね。そして、マーシーさんとヒロトさんの作風の違いというのがこんなに如実に出ている二曲なんだということで、並べてお聴きいただきました。

陣野さんは、こんな風にも書いています。「THE BLUE HEARTSの詞は、声を出しづらい者たち、声を奪われている者たち側に立っているように私には思える」。私には思えるという言い方がとても謙虚な気がしたんですが、今日はこの著者の陣野俊史さんと電話がつながっています。こんばんは。

陣野俊史(以下、陣野):こんばんは。

Rolling Stone Japan 編集部

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