アーティスト向け新サービス ストリーミング収入などが即時で受け取れるクレカが誕生

Create Music Group

米音楽会社Create Music Groupは、“ミドルクラス”アーティストのエンパワーメントという目標に向けてユニークなクレジットカードサービスを発表した。「アーティストが起業家のように考え、ブランドを構築することが私たちのねらいです」と、同社のアレクサンダー・ウィリアムズCOOは語る。

音楽ストリーミングは、小切手で支払われたロイヤリティ(著作権使用料)が現金化されたときにしかアーティストに金銭的な価値を提供してくれない。そして多くの場合、小切手が現金化されるのは数週間後のことだ。米カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするCreate Music Group(以下、CMG)は、これを変えようとしている。現地時間2月2日、音源流通、音楽出版、音楽マーケティングといった分野で急成長を遂げているCMGは、Create Carbonというクレジットーカードのベータ版プログラムを発表した。Create Carbonはアーティストのロイヤリティ収入とダイレクトに紐付けられたクレジットカードで、稼いだ分の金額がすぐに使えるのが特徴だ。CMGは、顧客であるアーティスト100名にベータ版を提供し、今後数カ月にわたってさらなる新規顧客を獲得したいと考えている。

2019年以来、FlighthouseをはじめとするTikTokに特化したブランドを傘下に持つCMGは、ラッパーのテカシ・シックスナインなどの数多くのアーティストの音源流通を担当し、同社が提供しているリアルタイムのロイヤリティ回収サービスを売りにしてきた。このサービスは、アーティストの収入の全体像に対するさまざまな見方をアーティストとそのチームに提供するために開発されたツールだ。新しいクレジットカードサービスはこのコンセプトの一歩先を行くもので、これによってアーティストは最低1カ月という、小切手が現金化されるまでの待機期間から解放される。CMGの共同創業者でCEOのジョナサン・シュトラウス氏は、9時〜5時で働く一般的な会社員は定期的に給料支払い小切手を受け取るが、大手企業のパックアップがないインディーズ系アーティストは必ずしも毎月の支払日まで待てるとは限らない。たとえばマーケティングなどのサービス料を払うためにすぐに資金が必要になることもあると、本誌に語った。

「アーティストはForm 1099(訳注:米国で働く個人事業主が取引相手から受け取るフォームで、個人事業主はこれをもとに収入を申告する)を提出しなければいけませんから、ローンを組むのはハードルが高いのです」とシュトラウス氏は言う。「インディーズ系アーティストのすることには、即時的な行動が求められないものはほとんどないと言ってもいいでしょう。何らかのマーケティングキャンペーンに投資したい場合、2カ月も待っていられません。楽曲の一般的なライフサイクルを見てみると、それがピークに達して勢いがつく頃には、その収益をすぐに使える状況でなければいけません。アーティストがディストリビューション会社からレコードレーベルに移る理由はここにあります。ストリーミングプラットフォームでトレンドになってストリーミング再生数がアップしても、収益にアクセスすることができないのです」。

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Translated by Shoko Natori

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