中島みゆきが歌う救いの手 瀬尾一三と共に語る

たかが愛 / 中島みゆき

田家:続いて、『ここにいるよ』Disc2寄り添い盤の11曲目「たかが愛」です。1996年のシングルで、アルバムは1996年の『パラダイス・カフェ』に収録されていました。

瀬尾:『パラダイス・カフェ』というアルバムを作る時に、とても贅沢なことを思い付きまして。同じ曲を僕が書いた譜面で、日本のミュージシャンで録音したバージョンとアメリカのミュージシャンで録音したバージョンを作りました。どっちがいいのかと、僕と彼女で選んで。二度手間のレコーディングをしたんですよ。今では考えられないですけど、やってみたくて。

田家:ちなみにこれはどちらが良かったんですか?

瀬尾:全体的に8:2でロサンゼルスのミュージシャンの方が良かったんですよ(笑)。別に日本のミュージシャンを貶しているわけではないんですけどね。

田家:でもそういうのを求めていた時期だった?

瀬尾:彼女にも次のステップを示したかった。まだロサンゼルス録音などしていなかったのでね。彼女も私2パターン録ってみようかなって言ったりしてましたよ。

田家:もう一つのバージョンは幻のアルバムになったんですね(笑)。この「たかが愛」という言葉で、何か感じられることはありますか?

瀬尾:たかが愛と言った後にされど愛ですね。

田家:ローリング・ストーンズの「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」ですね。

瀬尾:たかが愛と言って愛を軽んじているのではなくて、ある意味で持ち上げているんですね。

田家:その辺のニュアンスをお分かりいただけるということで。スケールが大きい曲ですね。

瀬尾:愛の讃歌ですよね。

田家:でもどこか、達観ではないけど毅然としているところもありますね。

瀬尾:ちょっと生臭いところもありますけど、そこが彼女の上手いところなんですよ。あまりに毅然としすぎると人にはあまり届かないかもしれないから、そこにちょっとだけ生臭いところもがあるのが、皆さんが彼女に惹かれる部分だと思いますよ。

田家:この“ちょっとだけ”というさじ加減が、お二人の関係を物語っているんでしょうか?

瀬尾:何もありませんよ(笑)。僕は5mくらい近づいて寄り添っているだけです。あとはオーラで囲ってます。

田家:オーラを活かす寄り添い方もあるんですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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