中島みゆきが歌う救いの手 瀬尾一三と共に語る

帰省 / 中島みゆき

田家:イントロだけで涙が滲んできますね。中島みゆきさんのセレクションアルバム『ここにいるよ』Disc2寄り添い盤の10曲目「帰省」です。2000年のアルバム『短篇集』に収録されていました。元々は、由紀さおりさん・安田祥子さん姉妹に提供した楽曲のセルフカバーです。これは当時どんな風に思われましたか?

瀬尾:東京生まれ東京育ち、もしくは大阪生まれ大阪育ちの人には帰省というものがないわけですよね。せいぜい実家に帰るくらいのもので、帰省というのを分かる人と分からない人がいると思うんです。僕も東京生まれ東京育ちではないのですが、帰省というだけで甘酸っぱいというかほろ苦いというか。懐かしさと照れ臭さみたいなものがあって、そこに親や親戚がいるなら会いたいなと思ったり。帰省という言葉だけで色々な感情がごちゃ混ぜになっているんですけど、彼女はうまくそれを表現してくれてますね。「年に2回、8月と1月」、お盆と正月は帰って、日常に戻ってきた時にそれが栄養になってもうちょっとここでも頑張れるなと思えるんですよね。

田家:帰省とか帰郷というテーマでは、帰りたいというテーマの歌は多いと思うんです。でも、この曲は帰りたいというのではなくて、帰省とはどういうことなのかを歌っている。帰省から戻った後のことまで歌っている。そういう意味では、これは他に類を見ない帰省ソングでしょうね。

瀬尾:普通なら「懐かしいよね、いい思い出がある」というので終わりなんでしょうけど、彼女はあくまでその人が日常生活を過ごしている場所を基盤に歌っているので。

田家:単なる望郷ソングではありませんね。帰省できなかった方々、今年の一月はこんな風に優しくなれているんでしょうか。

瀬尾:帰省できないからって、優しくなれていないのはダメですよ(笑)。でも、こうやって帰省した後は、色々なものに目がいったり耳がいったりして、鳥がすれ違っても挨拶したいくらいの心の余裕がほしいですね。

田家:この曲を聴いた後はそういう気持ちになれるかもしれません。

Rolling Stone Japan 編集部

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