外出自粛でギターを買う人が急増 コロナ特需で楽器の小売が好調


● 爆発的なギターブームの到来


Sweetwater、Reverb、Guitar Centerの3社は、外出禁止期間中にもっとも売れた楽器はギターだと、口を揃えて述べた。「2020年の状況を踏まえると、確実に言えることがひとつあります。それはギターブームが到来したという点です」とReverbのマンデルブロ氏は言う。「ギターの発注数と検索数は大幅に伸びており、そのなかでもFender、Gibson、Taylorといった有名ブランドのエレクトリックギターをはじめ、アンプ、ギターストラップ、エフェクターなど、ギターと一緒に使う機材やアクセサリーの検索数も伸びています」。アコースティックギターとアコースティックギター用アンプの検索数は、昨年と比べて50パーセント上昇した。

マンデルブロ氏は、TaylorのGS-Miniのようにリビングルームにぴったりの絶妙なサイズ感が特徴のアコースティックギターが圧倒的に人気だと語る。だがReverbでは、「ブライアン・セッツァーが自身の公式Reverb Shopで販売した1965年製の美しいFender Stratocasterのような、超レアなヴィンテージギターも売れ続けている」と言う。限定モデル、小さな工房が手がける“ブティック系”エフェクターもことのほか人気だ。マンデルブロ氏は、KLONやMU-TRONといったヴィンテージブランド製の定番およびレア物エフェクターの販売価格が2020年に「高騰し」、限定モデルのエフェクターがReverbで数分内、場合によっては1分もたたないうちに売れたと述べた。

「いまでは、1日1000本のギターを売っています。衝撃的な数ですよ」と、Sweetwaterのスラック氏は続ける。2019年のピーク時には、1日800〜825本のギターを売ることはあったが、いまとなっては1日1000本が平均だ。

米Fenderの南北アメリカ・欧州・中東の営業部門のエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント(EVP)を務めるタミー・ヴァン・ドンク氏は、ギター業界にとって2020年は「ジェットコースターのような」1年だったと語る。「3月に(ギターの)需要が消滅し、4月に回復し、5月以降は爆発しました」とヴァン・ドンク氏は語る。「弊社は、7億ドル(約735億円)超という史上最高の売り上げをもって2020年を締め括りました。2019年と比べて17パーセントのアップです」。米GibsonのCEOを務めるジェームズ・”JC“・カーレイ氏は、「それは最良の時代でもあり、最悪の時代でもあった」と、イギリスの小説家チャールズ・ディケンズの名言を用いて2020年に言及した。「4月、5月、6月の3カ月は難しい時期でした。それ以降は埋め合わせとは程遠い、凄まじい需要があったのです」。Gibsonの会計年度は今年の3月に終わりを迎えるため、まだ最終的なデータではないものの、8月以後は「売り上げを着実に伸ばし、成長を続けている」とカーレイ氏は言う。

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およそ1年前、販売されているギターのざっと3分の1ぐらいがオンライン販売によるものだったと、カーレイ氏は述べる。その頃カーレイ氏は、実店舗とオンライン販売の比率が50/50になるのは5年後だろうと予想していた。「私たちは、50/50という予想が現実のものとなった状況を目の当たりにしているのです」と本誌に述べた。「ポスト・コロナ時代においても、楽器業界は50(実店舗販売)/50(オンライン販売)という比率に落ち着くと思います……必要は発明の母だと言いますが、必要はギターへのアクセスとギターの進化の母でもあるのです」。

Translated by Shoko Natori

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