外出自粛でギターを買う人が急増 コロナ特需で楽器の小売が好調


● 迫られる戦略変更


新型コロナが米国に大打撃を与えた2020年3月以前にSweetwaterは48万平方フィート(約4万5000平方メートル)の倉庫を新設していた。その理由はスラック氏曰く、家族経営の同社の売り上げが毎年着々と伸びていたからだ。だが、米国の人々が自宅から動かなくなるにつれ、その売り上げは急激に伸びた。同年4月、スラック氏は直近の1週間だけで11月の感謝祭の時期にしか見られないような数値を超えたと本誌に語った。スラック氏はもっと広い倉庫が必要だとすぐに気づき、5万平方フィート(約4600平方メートル)の追加スペースの建設を指示した。同施設は夏を前に完成した。

スラック氏は、パンデミックによってSweetwaterが毎年恒例のオンラインイベント、GearFestを延期しなければならなかったと述べる。例年どおりなら、GearFestは中西部インディアナ州フォートウェインにある同社キャンパスで開催されるはずだった。2019年の参加者数は1万8000人だったが、バーチャルという形での2020年の参加者数は12万5000人を超えていた。スラック氏は、今後は対面式のイベントを復活させたいと期待を寄せているものの、引き続きバーチャルという選択肢も残しておきたいと本誌に語った。

それに加えてSweetwaterは昨年、臨時職員を除いて400を超える雇用を新たに創出した。「通常なら400人体制の倉庫を700人まで大幅に増員し、そこから徐々に減らしていく予定です」とスラック氏は話す。「(倉庫の従業員は)すべて臨時職員です。ですが、増員のほとんどは倉庫担当の正社員と新規の営業担当です。セールスエンジニアとして119人を新たに採用したことに加え、さまざまなレベルのエグゼクティブも採用しました。福祉担当として女性もひとり雇いました。全部門にわたって新しい人材を採用したのです……セールスエンジニアをひとり雇うごとにアドミニストレーション担当とさらに多くのテクニカルサポート要員も採用しなければなりません。サービス部門の人員をさらに増やす必要もあります……いまとなっては、2000人を超える人たちが弊社で働いています」。120人ないし130人のセールスエンジニアを近い将来採用しようと考える同社は、こうした臨時職員の存在なしに2020年を切り抜けることはできなかった。「(増員は)倉庫でのフルフィルメント業務のためです」とスラック氏は言う。「いつものように1日1万4000〜1万6000件ではなく、2万2000〜2万8000件の注文をこなしていた時期は、猫の手も借りたいほどでした」。

同年8月、Reverbのマンデルブロ氏は同社の従業員数が190人であることと、同年の終わりまで採用活動を継続し、「プロダクトチームを40パーセントほど拡大する」と、シカゴを拠点に活動するアフリカ系アメリカ人の起業家の支援団体・Chicago Innoに語った。同社の担当者は採用に関する詳細を明かさなかったものの、1年を通じて採用活動を続けていると、本誌に明言した。

ダダリオ氏は、Guitar Centerが「全米の290を超える店舗においてオンライン、アプリ、あるいはコールセンター経由で注文した商品が最寄りの店舗で受け取れる非対面式の店頭受取サービスを急速に導入した」と述べた。それに加えて同社は、「対面式のサービスからオンライン購入に移行する顧客の増加に対応するため、商品選び・梱包・配送キャパシティを増やし、講師に一対一のオンラインレッスンのやり方を指導し、インストアレッスンの受講生をオンラインに移行させた」。

Guitar Centerには新たな人材を採用する余裕はなく、実際に「相当な数の従業員を一時解雇するだけでなく、一部のポジションを撤廃し、ビジネスに生じた変化に対応すると同時に店舗閉鎖命令に従わなければいけませんでした」とダダリオ氏は言う。「一時解雇された従業員の大半ができるだけはやく職場復帰できたことを嬉しく思っています」。

Guitar Centerは可能な限り早急に破産申告を行うことに力を注ぎ、このプロセスをなんとか年内に終わらせることができた。12月22日にすべてのプロセスが完了したのだ。「Guitar Centerは、8億ドル(約840億円)近い債務の消失と1億6500万(約173億円)という新たなエクイティ・ファンドによって以前よりも強いバランスシートとともに復活しました」とダダリオ氏は語る。「それに加えて、資本増強取引によってGuitar Centerの流動性は大幅にアップし、これが継続中のオペレーションを支え、戦略的な成長イニシアチブに投資すると同時にビジネスプランの実行を可能にしたのです。弊社は長期的かつ持続可能な成長をサポートするのに欠かせない財政面ならびにオペレーション面での柔軟性を手に入れました。このプラスの勢いの継続に向けて、弊社は構えの姿勢を示しています」。

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE