女性死刑囚の刑執行をめぐる悲劇、虐待とトラウマと精神疾患

幼い少女を守れないとこういう結末になる

ーリサ・モンゴメリーの虐待、トラウマ、精神疾患の歴史は、彼女の人生の主要部分だと思われます。なぜそれが判決では影響しなかったのでしょう?

(最初の裁判で)政府側の専門家は、リサが自ら進んで継父にレイプされていたと表現したんです。そうしたある種の女性蔑視が、この裁判ではまかり通っていました。いわゆる被害者バッシングです。こうした人々を起訴できる人間がいるとすれば、(検察側は)リサを被害者として(証言台に)立たせたでしょうに。それが反対に、「知りようがない、彼女は誰にも言わなかったのだから。記録はどこにある?」と言うんですよ。児童レイプは秘密裏に行われます。証人などいません。

2016年、我々がこうした事実を突き止めて審問会を開いたとき、政府はきっと人身売買には反対の立場をとるはずだと思っていました。でも政府は気にもしなかった。彼女は人身売買の被害者だったんです。幼い少女を守れないとこういう結末になる。だから女性たちは真相を語らないんです。

ーモンゴメリーに代わって上訴した際、あなたは元弁護士について、彼女の傷ついた過去の全容を調べようとしなかった、と主張して非難しています。彼女の裁判で、元弁護士が乗り越えられなかった障壁があったんでしょうか?

リサはひどく精神を病んでいました。私は大勢の精神病患者の弁護人を務めていますが、彼女の過去は把握するのがとくに困難でした。彼女のような精神疾患の症状は、しっかり調査をするまでなかなか検知できない。解離性障害の相手と向かい合って座ることはできます。でも何の反応もないわけではありませんよね? リサはよく、自分がいい母親かのように人生を語っていました。でもちゃんとよく見れば、この女性が現実から完全にかけ離れているのは分かります。

ーあなたは何十年も死刑裁判の被告人の弁護人を務めていますが、大多数が男性です。女性の死刑囚の代理人を務めたことで、とくに大変だったことはありましたか?

女性の代理人を務めることは想像していた以上に大変です。これまで2人の女性を弁護しました。ゲイリー・オーウェンスとリサ・モンゴメリーです。ゲイリーの場合は慈悲を受けることができました。彼女は2019年の感謝祭で亡くなりましたが、自由の身としてこの世を去りました(註:ゲイリー・オーウェンスは1986年、殺し屋を雇って夫を殺害しようとした事件で有罪となった)。

こういう女性たちは深刻なトラウマを経験しています。恥と屈辱を抱えています。ゲイルの場合も、夫の仕打ちを息子たちに知られるぐらいなら、死刑になった方がましだと考えていました。

リサの場合は100人以上の女性支持者がサポートしてくれました。でも世間は、被害者を信じろと言うわりには彼女のことは信じなかった。そんな言葉は、実際に受け入れようとするまでは単なる詭弁です。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE