勢いづく有料ライブ配信は音楽産業の救世主か? それとも更なる格差拡大の起爆剤か?

デュア・リパ

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2020年12月25日発売号の誌面に掲載された、パンデミック以降に急成長したライブストリームコンサートの現状を考察した記事。2021年に入ってからはライブストリームのサブスクリプションサービスBandsintown PLUSの開始がアナウンスされるなど、今まさにライブストリーム産業は変化の途上にある。この現状から見えてくる可能性と問題とは?

いまだ多くの国でライブ再開の目途がつかない中、有料ストリーミングライブに活路を見出すアーティストは今後さらに増えることになりそうだ。

感謝祭の週末にデュア・リパが行ったライブストリーム「Studio 2054」は驚異の500万ヴューを達成。ライブストリーミング視聴数の新記録を打ち立てた。



BTSが2020年6月に行ったライブストリームも75万人が視聴、トラヴィス・スコットのフォートナイトでのヴァーチャルライブは20億円以上の売上を記録したと報じられている。トラヴィスは通常のライブ一回での売上が1億円ほどなので、たった一度の配信でこれほどの数字を叩き出すのは驚異的だ。

Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical


これからは、慎重に様子を見ていたビッグネームたちも次々とライブストリームに乗り出すに違いない。実際、直近ではアルバムが全米2位を記録したBLACKPINKが2021年1月31日にライブストリーム「THE SHOW」を開催することを発表している。

BLACKPINK - ’THE SHOW’ TRAILER #2


もっとも、大成功を収めた上述のライブストリームは、どれも数ヶ月に渡る綿密な準備と莫大な費用をかけて実現へと漕ぎつけている。フェスのライブ配信のような単なる中継ではなく、通常のライブとは異なる特別な体験を提供しなければ視聴者はわざわざチケットを買わない。そのため、リターンを求めるのであれば時間と資金は惜しみなく投入しなくてはならないというわけだ。

ただそれでも、ライブストリームには十分なメリットがあるようだ。デュア・リパのチームは、通常のライブが再開されたとしてもライブストリームを継続すると表明。ライブとライブストリームは別物として今後も両立し、ライブストリームがポップアーティストの大きな収入源となっていくのは間違いないだろう。

しかし、大きなバジェットを投下してライブストリームを行えるビッグネームたちはいいとして、インディや新人のアーティストはどうなるのだろうか。

インディの中では比較的大物と言えるフォンテインズD.C.は2020年11月にインタラクティヴなVRライブを開催し、フリート・フォクシーズは年末に60人以上のコーラス隊を引き連れて教会からライブストリームを行った。これらがどの程度の結果を残すことが出来たのかは一つの指針になるだろう。

Fontaines D.C. Melody VR announcement


果たしてライブストリームはトップアーティストとそれ以外の乖離をさらに広げることになるのか、それとも壊滅的なライブ産業全体を底上げする救世主となるのか。その答えはまだ見えていない。

Edited by The Sign Magazine

【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のベーシスト50選(写真50点)

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE