ザ・ウィークエンドは無視? グラミー賞2021年ノミネーションを巡る様々な反響をレポート

ザ・ウィークエンド(Photo by Anton Tammi)

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2020年12月25日発売号の誌面に掲載された、第63回グラミー賞のノミネーションを考察した記事。開催地ロサンゼルスにおける新型コロナウイルス感染拡大を受け、授賞式が3月14日に延期されることも発表された今年のグラミー。今回の押さえておくべきポイントとは何か?

2020年を代表するヒットと言えば、ザ・ウィークエンド『After Hours』を挙げる人も多いに違いない。各メディアでは初期ミックステープ三部作以来の高評価を受け、セールス的にも大ヒットを記録。シングルの「Bliding Lights」はSpotifyで「2020年に最も再生された曲」の1位にも輝いた。2021年には全米一の視聴率を稼ぐスーパーボウルのハーフタイムショーでのパフォーマンスも決定している。



しかし、先日発表されたグラミーのノミネーションでは、なんとザ・ウィークエンドは一部門もノミネート無し。世界で最も権威ある音楽の祭典が今年随一の話題作を完全にスルーしたことは大きな波紋を呼ぶことに。ザ・ウィークエンド本人も「グラミーは腐敗したままだ。僕と僕のファンに業界の透明性を証明する義務がある」とツイッターで怒りを露にしている。



ザ・ウィークエンドが「腐敗したまま」と表現するように、グラミー賞が問題を抱えていることはここ数年ずっと指摘され続けてきた。特に問題視されてきたのは、白人男性と較べて黒人や女性の作品が軽んじられていること。近年はそれに抗議を表す形でドレイクやフランク・オーシャンがグラミー選考への作品提出をボイコットしたのも記憶に新しいだろう。

もちろんグラミー側も変革を進めていないわけではない。「アーバン」や「ワールドミュージック」など差別的な意味合いや植民地主義を想起させる言葉を冠した部門は名称を変更。2019年にはグラミー発足後、初めて主要四部門のノミネート数を増やし、より幅広いアーティストがエントリーできるように配慮した。クインシー・ジョーンズやジョン・レジェンドをメンバーに含む諮問機関Black Music Collectiveも設立し、ブラックミュージックへの理解を進める努力も行われている。

ただ、それでも、今年のグラミーのノミネーションには多くの人が疑問を呈することになった。

やはり一番の驚きはザ・ウィークエンドの不在だが、2020年指折りのヒットを飛ばしたポップ・スモーク、ジュース・ワールド、リル・ウージー・ヴァート、リル・ベイビーなどが主要部門にエントリーすらされていないことにはブラックコミュニティを中心に疑問の声が挙がっている。

Pop Smoke - Shoot For The Stars Aim For The Moon


Lil Uzi Vert – Eternal Atake / LUV vs. The World 2


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