リル・ウェイン×リル・ベイビー対談 サウスがヒップホップを支配する理由

曲作りとアイコンとしての美学

ー誰もがあなたについて言ってることがありますよね、ウェイン。ずっとスタジオにこもっていて、狂ったように働いているって。

ウェイン:それは(キャッシュ・マネーの創業者である)バードマンとロナルド・“スリム”・ウィリアムズ、そしてマニー・フレッシュから直に学んだことなんだ。彼らは俺たちにこのやり方を刻み込んだんだ。彼らはスタジオに月曜日から日曜日まで毎日通う。なんでもいいから働けって頭に叩き込まれた。まだ学校に通っていた頃だ。13歳とか14歳で、こっちに試験があるとかなんとか知ってるのにまったくお構いなし。「スタジオにいろ。ヴァースが要るんだ」って。そうしてるうち身体に染み付いたんだ。

ベイビー:俺について言えば、とにかく稼いで身を粉にして働けっていうのから来ていると思う。以上。なんでもそうだけど、もし稼ごうとしてるんだったら、ハードにいくだろ。スタジオでも同じことだ。俺にとっては結果が一番。つまり、正しく仕事に打ち込めば、ツアーに出て、金を稼ぐことができる。そうすればなにか買うこともできる。

ーあなた方みたいなやり方でスタイル・アイコンになったり、カルチャーをかたちづくったりしてラッパーが認知されることってないですよね。ふたりとも、自分なりのルックスをどのようにしてつくりあげたんでしょうか?

ウェイン:いつも人と違っていたいっていうそれだけだよ。俺はホット・ボーイズっていうグループから始めたんだけど、こういうスローバックジャージを着るようになった。そのおかげで、俺はもうちょっと個性を出せるようになったんだ。キャッシュ・マネーでもユニフォームがあった。俺はいつもちょっと道をそれて目立ちたいと思ってたよ。

俺の母親はひとり親だった。彼女は俺の背骨を折るくらいの勢いで、俺がイカしてるか、ファンキーかを確かめてきた。だから、スタイルの源はそれだ。ちょっと頼まれて角の店でコークとポテトチップスを買ってくるだけのときでも――店に寝起きの格好のままでいくもんじゃないって。俺も息子たちにはそう教えてるよ。

ベイビー:俺は元からなにが欲しいかはわかってた。けど、それをやってみるだけのカネがいつでもあるわけじゃなかった。だから、金を稼ぎ始めさえすればよかったわけだ。

ウェイン:それはそうだ、まさに。

ーあなたがたのプロダクションは異次元です。ビートを選ぶプロセスについて教えてください。

ベイビー:プロデューサーからビートをもらってくる。みんながイカれるようなビートをね。

ウェイン:彼が言うみたいに、すべての称賛はプロデューサーたちの賜物だよ。単純明快。もし音楽がよかったというなら、じゃあ彼らのおかげだ。俺は音楽の部分には関わってない。

ーアルバムにまとめるときはどうやってトラックを選んでますか? 集団でやるものですか?

ウェイン:マックがやる。単純明快。俺はただ全部ならべて聴かせて、彼に髪をかきむしって考えてもらう。あいつに髪なんてないんだけどもね。俺は彼に、そうだな、90曲は渡す。本当に彼に必要なのがたったの2曲でも(笑)。あとは、どれを選んだかを教えてくれるだけだ。つまり、こういうことができるのは、俺が自分のやることひとつひとつに自信を持ってるからに尽きる。俺がやる曲は全部この国でナンバーワンを獲るに値すると思ってるから、彼があの曲を選ばなかったからといって頭にきたことは一度もない。彼が選ばなかったのも最高のものばかりだ。ミックステープに入れるよ。

ベイビー:仲間たちに聴かせると、みんな俺に「あの曲もう一度」とか「あれが聴きたいな」とか教えてくれるんだ。それである意味感じ取ることができる。周りにいる連中はいろいろ教えてくれるんだ。「Instagramでチラ見せしなよ」とかなにか。他のみんなに頼らなくても仕事を済ませられるようにしてるけれど。

ウェイン:昔が懐かしいよ。今は俺は自分だけでスタジオに入る。制作中にまわりに仲間がいるのは好きじゃない。首を突っ込ませないようにしてるよ。火事かなんかでも起こったら教えてくれ、って。俺はひとりになるんだ。そしたらあとはフィーリングだけだ。頭の中で曲を組み立て始める。これは特別に教えるけど『ノー・シーリングス3』では俺とベイビーが一緒にやってる。

ーウェインは十分に評価されてると思います?

ベイビー:俺がラップ・ゲームについて知り始めたのは、十分に評価されるなんてことは絶対ないってことだ。ある人たちからは評価されるかもしれないが、多くの場合、評価なんてされないよ。

ウェイン:そのとおりだって言うしかないね。そのとおりだ。

From Rolling Stone US.

Translated by imdkm

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