世界最大の音楽レーベルがゲーム、スポーツ、フィットネスに投資する理由

「FIFAの目標は、サッカーを本当の意味でグローバルかつインクルーシブで、人々から愛される存在にすることです」とFIFAのマーケティング・ディレクターを務めるジャン=フランソワ・パシー氏はリリースのなかでこのように述べた。「サッカーと音楽のクロスオーバーは、両文化の広い意味でのつながりを強調するものです。サッカーと音楽はどちらも普遍的な言語であり、唯一無二の感情を生み出す力を持っています。このふたつを結びつけるのは自然なことです」。

そして忘れてはいけないのが、UMGとVariisのコンテンツ・ライセンス契約だ。Variisとは、北米で高級フィットネスクラブを展開しているEQUINOXが2020年にローンチした、自宅でフィットネスが楽しめるアプリである。Variisは、サイクリング、ヨガ、ランニングといった多種多彩なエクササイズクラスを提供しているという点では、フィットネスマシンとエクササイズ動画のサブスクリプションサービスを提供しているペロトンと似ている。だが、すべてのクラスがペロトンというブランドのものであるのと異なり、VariisはEQUINOX傘下のSoulCycle、PureYoga、Precision Runといった他社のインストラクターを起用することができる。ペロトンとのさらなる違いとしてVariisはNetflixやDisney+といった定額制動画配信サービスとも契約を結んでいるため、ユーザーは運動していないときも映画やテレビ番組がストリーミングできるのだ。

それに大抵のワークアウトには、音楽が欠かせない。だからVariisがNetflixやDisney+との契約にこぎつけるために大枚をはたいたとしたら、ソニー・ミュージックエンタテインメントやワーナー・ミュージック・グループとのパートナーシップが実現する日は近いかもしれない。だが実際には、業界最大手のUMGが最初にVariisと手を組むことになるだろう(SoulCycleユーザーはテイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、ドレイクといったアーティストの楽曲が楽しめるようになるかもしれない)。

時には意外とも思えるような組み合わせのブランドパートナーシップは、とりわけファッションと飲食業界では当たり前のように行われている。新型コロナのパンデミックによって多くの人がステイホームを続け、ライブイベントにほとんど足を運ばなくなったいま、大手レーベルも“音”を使ったクリエイティブな方法を生み出す必要性に迫られている。

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どうやらUMGは、新しいリスナーを獲得することに特に力を注いでいるようだ。なんとなく耳を傾けていたプレイリストから音楽以外のものは流れてこないし、ポスト・マローンとクロックスのコラボサンダルを買うのはあなたがポスト・マローンのファンだからかもしれない。だが、あなたがポケモンを追いかけたり、スポーツの名場面に熱狂したり、エクササイズでアドレナリンを大量放出していたりするときのBGMはあなたの耳に残り、忘れられないインパクトを残すだろうとUMGは踏んでいるのだ。

本誌はUMGの担当者にこうしたプロジェクトの目標を具体的に解説するよう求めたものの、回答は得られなかった。だが、2021年が始まってまだ数週間だ。今後UMGが新たな情報を公表することは間違いないだろう。

From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori

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