トランプ逆転を信じた、陰謀論「Qアノン」信者の落胆と困惑 

2021年1月16日、ネバダ州カーソンシティで「トランプJFK JR.」と書かれた旗を手に歩くQアノン信者 バイデン大統領の就任式を前にトランプ支持者らは州都に集結したが、群衆の数は小規模のまま。(Photo by Ty O'Neil/SOPA Images/LightRocket/Getty Images)

陰謀論「Qアノン」の説によれば、ジョー・バイデン米大統領の就任式は「嵐」の日、すなわちドナルド・トランプ前大統領が立ち上がって邪悪な敵を逮捕する瞬間だと考えられていた。

就任式は10日間の暗黒の後に迎える「大いなる覚醒」の日。メディアやインターネットが遮断され、トランプ氏の敵はみな自分たちの犯罪が緊急放送で暴かれて一斉逮捕され(Qアノン信者が小児性愛者と信じて疑わないジョー・バイデン氏も含む)、グアンタナモ・ベイに送られて裁きを受け、ゆくゆくは刑に処せられるはずだった。

だが現実には、就任式では暴力も、復讐も、混乱も見られなかった。1月6日の議会乱入を受けてワシントンDCは閉鎖され、Qアノン信者が州兵に偽装して式典に潜入するつもりだ、という先のFBIの報告にも関わらず、ジョー・バイデン大統領の就任式は比較的地味に執り行われた。暗号化メッセージアプリTelegramでは主要なQアノン系インフルエンサーの多くが、「嵐」が起きなかったことに対して猛り狂うことも怒ることもなく、喪失感を消化しようとしていた。

【画像ギャラリー】「Qアノン」の「シャーマン」が議会に突撃(写真19点)

なかには血気盛んに、しばしば繰り返されてきたスローガンのごとく「計画をを信じろ」と信者らに熱心に呼びかける者もいた。「今日は待ちに待った日だ!」 。Telegramでもとくに有名なQアノンチャンネルにこう書きこんだ者もいた。「神と愛国者に使命を果たさせよ。正午に何が起きるかは気にするな。そのあとの展開に注目せよ」。別のユーザーは「俺たちは解き放たれた。いよいよだ。俺たちならどんなことも切り抜けられる」と書いた。忠誠を貫く読者の一部は、こうした激励のメッセージに心を慰められた。だがそれ以外は、小児性愛者の左派に対する血に染まった復讐という妄想が実現しなかったことに怒り、激しく失望した。「終わった。もう終わりだ。6カ月間もQに執着していたなんてバカみたいだ」という書き込みのあとには、涙を流す絵文字が続いていた。別の書き込みはもっと核心をついていた。「結局、全部くだらなかった。でもさらにくだらないのは、自分がそれを信じていたことだ」

意外にもQコミュニティの一部インフルエンサーの間には、静かな諦めモードが漂っていた。匿名のユーザー「Q」が頻繁に投稿していた掲示板8kunの元運営者で、大勢からQ本人だと目されていたロン・ワトキンスはTelegramにこう書き込みした。「自分たちはすべてを捧げた。これからはできる限り前を向いて、普段の生活に戻っていかなくてはならない」

Translated by Akiko Kato

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