中島みゆきのセレクションアルバムが持つ意味、瀬尾一三と探る

タクシードライバー / 中島みゆき

田家:続いて6曲目「タクシードライバー」。オリジナルは1979年のアルバム『親愛なる者へ』に収録されていました。こちらも瀬尾さんが関わられる前の作品、福井峻さんアレンジを手掛けられた曲ですね。今回のアルバムのDisc1で言うと、「ホームにて」がこういうアクセントの曲だと思ったのですが、Disc2だとこれですね。

瀬尾:これも映像が浮かぶくらいによく仕上がってますよね。ありそうな話だし。でも、皆さんが好きな曲なのに、これまであまりアルバムに収録されてないんですよね。

田家:セレクションアルバムには初収録ですね。なんで収録されてこなかったんでしょうね。

瀬尾:入れなきゃダメな曲がいっぱいあるからかもしれないですね。寄り添い盤には外せないんじゃないかということで入れたんだと思いますけど。

田家:今回瀬尾さんがアルバムに関わられる前の話も無遠慮にお伺いしているんですけど、瀬尾さんがリマスタリングボックスを作られた時に、瀬尾さんが関わられる前の作品も全部お聴きになって手掛けられたんですよね。 あの時は、改めて思うことがあったんでしょうか?

瀬尾:僕は1988年から彼女に関わっているのですが、その前のものは代表曲以外聴いたことがなかったんですよ。逆に言えば、聴くのが怖かったから聴いてなかったというのもあるんです。秘密の箱を開けてしまうような感じで、それを聴いたら僕はどんな影響を受けるのか怖かったんです。でも、リマスターを作るに当たって実際に聴いて、怖いというのは感じなかったんですけど、すごく良くできてるなということと、僕がやろうとしていることも、彼女のやろうとしていることから見たら何も変わってないというか。彼女の主義、主張には一本筋が通っていたので、そこにお手伝いするという意味では僕以前の方と同じですね。そのバトンを僕が受け取れば良かったというだけだったので、怖さは無くなりました。

田家:むしろ自分の進むべき道が見えたと。いわゆる歌の上手さという言い方をしますが、この曲はそういう歌じゃない感じがしますね。

瀬尾:上手いですよ。味がありますよ、なかなかこんな感じで歌えませんよ。

田家:この曲は泣きながら歌っているのかと思ってしまう部分もありますね。

瀬尾:すごく上手い役者ですね。

田家:瀬尾さんも先ほど仰っていましたが、一篇のドキュメンタリーフィルムのような曲です。

Rolling Stone Japan 編集部

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