中島みゆきのセレクションアルバムが持つ意味、瀬尾一三と探る

悪女 / 中島みゆき

田家:続いて4曲目「悪女」。1981年11月に発売になったシングルで、『わかれうた』に続いてチャート一位獲得の二作目でした。アルバムは1982年の『寒水魚』の1曲目です。今までの瀬尾さんのお話の中で、この頃はまだ僕は担当していなかったという話が何度か出てますが、このアルバムは中島さんのファンの中でも1、2を争うアルバムでしょう。

瀬尾:そうですね。でも、その頃はその程度の関心でしかなかったんです、すみません(笑)。

田家:この「悪女」はファンの中でも解釈が色々ありまして、これが楽しいんです。歌詞に出てくるマリコとはどんな人か? つまり、マリコさんというのは相手の男が隠しているあの子なのか? 違うかなと思うんですが(笑)。

瀬尾:なるほど。中島さんは複雑なものが好きなので。

田家:なんで男と遊んでいる芝居の電話をかけるのか? なんで女のつけないコロンをわざわざつけて帰るのか? 新しい恋人に自分への愛想をつかせるため?

瀬尾:そんなの簡単じゃないですか。あなたは浮気してるけど、私だってできるわよという意思表示で強がり方でしょうね。それでほとんど失敗するんですけどね(笑)。

田家:それで敢えて相手に別れさせるという気遣いもある。

瀬尾:気遣いというか、自分が傷つきたくないという一つの鎧ですよね。本当は行かないでと言いたいんですけど、この辺の二重、三重のパラドックスが中島さんは本当に得意ですよね。もっと素直になれよと言いたいくらいですね(笑)。

田家:マリコというのは二人の共通の知り合いの女性で、マリコに私も新しい男がいるのよと示すために、男物のコロンをつけて帰ったりするという。

瀬尾:マリコさんから彼に情報がいくようにしているんでしょう。こんがらがってるなあ(笑)。

田家:当時は本当に色々と議論がありましたね。

瀬尾:これで議論するのも平和で楽しいことですね。皆さんなら誰になりたいのかな? マリコになりたいのか、この本人になりたいのか、男の浮気相手になりたいのか、皆さん選んでください(笑)。

田家:それぞれの主人公を思いながらお聴きください。この「悪女」で瀬尾さんにお訊きしたいことがありまして。吉田拓郎さんが、「悪女」のバックでギターを弾きたいとずっと言っていましてね。

瀬尾:言ってましたね。会う度に僕に「中島の後ろで悪女のギター弾きたいんだよね。俺絶対うまいよ」とプロモーションしてくるんですよ。

田家:その話はこの先どうなるんでしょうか?

Rolling Stone Japan 編集部

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