米ライブ・ネイション、グッド・シャーロットのライブストリーミング会社を買収

2017年、ジョエル・マッデンは双子の兄弟でグッド・シャーロットのメンバーでもあるベンジー・マッデン、さらにはシェリー・サエーディ氏とカイル・ヘラー氏とともにライブイベントにおけるVIP体験とライブストリーミング特典といったサービスを提供する会社としてVeepsを立ち上げた。創業以来Veepsはライブ配信事業を強化しつづけ、2020年にはおよそ1000件ものライブ配信を実現し、1000万ドル(約10億3800万円)を超えるチケットを売り上げたことを明かした。同年Veepsは、シンガーソングライターのブランディ・カーライル、ワン・ダイレクションのリアム・ペインとルイ・トムリンソン、パティ・スミスといった数多くのアーティストのライブ配信を手がけた。

「ライブストリーミングは今後、アーティスト活動にとって必要不可欠なものになります。だからこそ私たちは、すべてのアーティストが自分に合ったライブストリーミングビジネスを見極めなければならない状況に直面すると考えています」とジョエル・マッデンは話す。

マッデンは次のように続ける。「私たちがワクワクしている点は、アーティスト活動のストリーミングという側面を成長させるサポートができることです。ライブストリーミングは、イベントが復活しても存在しつづけるでしょう。すべての配信番組が生き残るとは言いませんが、ストリーミングはアーティストがツアー活動を行う際に検討するものであることは間違いありません。問題は、どのライブを配信する、あるいはどのVIPイベントを配信するかです。これらはすべて、アーティストのツアー活動というビジネスを核としたクリエイティブな会話のテーマとなります」。

買収に関する協議は数カ月前に始まったとマッデンは話す。マッデンは会社名を伏せたまま、買収について複数の投資会社やIT会社と協議したことを明かしたが、音楽というバックグラウンドを考慮した結果、ライブ・ネイションほどふさわしい企業はないと考えた。ライブ・ネイションがVeepsの株式の過半数を保有する一方、マッデンは両社がジョイントベンチャー的なアプローチを採用し、自身とベンジーがVeepsの実質的な運営を担いつづけることを期待している。

「ありのままの私たちでいてほしい、というのがライブ・ネイションのメッセージです」とマッデンは話す。「ライブ・ネイションはこのメッセージを心から愛しているのです。彼らは私たちが大切にしているものや私たちとアーティストとの関係を尊重しています。この会社は実にユニークで、本当の意味で“アーティスト・ファースト”な会社と言えますから、それが伝わったのだと思います。ライブ・ネイションはこれらすべてを尊重していて、その愛情が私たちの対話を導いてくれたのです」。

新型コロナのパンデミック到来後、巧妙なからくりとして避けられてきたライブストリーミングは、瞬く間に業界全体の救世主的存在となった。世界中で多くの人が自主隔離を続けるなか、そして有観客のライブイベントの開催がはやくて2022年になるという予測が数多く存在するなか、ライブストリーミングは2021年のライブエンターテイメントにおいて欠かせない体験のひとつであり続けるだろう。

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たとえライブイベントが復活したとしても、多くのエージェントやアーティストのマネージャーは、何らかの形のライブストリーミングはライブ体験として存続すると口を揃える。BTSやデュア・リパの配信イベントが証明したように、視聴者数のリミットというものが存在しないライブストリーミングには、高い収益性を実現するポテンシャルがある。だからといって、かならずしも成功するとは限らない。バーチャルイベントのなかには制作費が膨れ上がったものもあり、複数のブッキングエージェントが本誌に語ったところによれば、ライブストリーミングの売上と視聴者数を最大化するには、まだまだ改善の余地がある。とりわけアーティストのファンは、こうしたコンテンツの山に埋もれているのだから。

Translated by Shoko Natori

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