ローリン・ヒルが語る、アーティストの「名声」と「自己犠牲」

ローリン・ヒル(Photo by Anthony Barboza/Getty Images)

90年代末のローリン・ヒルの軌跡は、ポピュラー音楽における物語そのものだった。彼女は女優、そしてザ・フージーズ(2作目にして最終作『ザ・スコア』は90年代屈指の名盤として知られている)のメンバーとして、その名を広く知られることとなった。

そして彼女は22歳の若さで、ソロ活動という大胆な行動に出た。1998年にリリースされた、彼女の滑らかな歌声と強烈なライムに満ちた『ミスエデュケーション』は、ダンスフロアや各ラジオ局、そしてMTVを席巻した。ヒルは音楽以外の面でも脚光を浴び、ファッションアイコンとしても崇められた。映画出演のオファーも次々に舞い込んだが、彼女はそれらを辞退する。

『ミスエデュケーション』はグラミー賞5部門を受賞し、その後は長期に及ぶツアーも行われた。しかし2000年代初頭の時点で、ヒルは名声に背を向け、シーンからほぼ完全に姿を消してしまう。彼女は同作以降スタジオアルバムを発表しておらず、フルレングスの作品としては2002年リリースの『MTV Unplugged No. 2.0』が最後となっている。同作で彼女は新曲群をアコースティックスタイルでプレイしていたが、オーディエンスの反応は鈍かった。

しかし、『ミスエデュケーション』の魅力は今なお色褪せていない。発表から20年が経った現在でも、同作は音楽史に名を残す名盤として記憶されており、昨年秋に本誌の読者投票に基づいて決定された「歴代最高のアルバム500枚」では10位にランクインした。同作に収録された曲の多くは今もシーンと共鳴しており、シングルカットされた「エックス・ファクター」はドレイクやカーディ・B等のヒット曲でサンプリングされている。また、同作が後続のアーティストたちに与えた影響は計り知れない。リアーナからセイント・ヴィンセントまで、多種多様なアーティストが同作にインスパイアされたと語っている。

『ミスエデュケーション』の発表以降、彼女は数多くのトラブルを経験してきた。同作のリリース後、彼女は自分たちの功績が正当に認められていないと主張するコラボレーターたちから訴訟を起こされる。詳細は明らかにされていないが、両者は3年後に和解している。また2012年に、彼女は脱税の罪に問われ、3カ月間にわたって収監された。最近ではツアーに出ることも増え、不定期に楽曲を発表してもいるが、活動の柱となっているのは今なお広く愛されている『ミスエデュケーション』の再現ライブだ。

本誌の「500 Greatest Albums」ポッドキャストの最新エピソードで、貴重なインタビューに応じたミズ・ヒルは、『ミスエデュケーション』の制作過程とそれ以降の出来事について語ってくれた。Eメール形式で行われたインタビューで、彼女は家族を守らねばならなかったことや、アルバムのプロモーション期間以降はほとんどサポートを得られなかったことなどについて率直に語っている。

【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選で10位にランクインした『ミスエデュケーション』

Translated by Masaaki Yoshida

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