サマンサ不在の『SATC』リブート版を、真の続編と呼べない理由

サマンサ役のキム・キャトラルは「セックス・アンド・ザ・シティ」のMVP的存在だった。 HBO/Getty Images

先日、新たに配信が発表された米人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の続編『And Just Like That(原題)』は、オリジナルシリーズを長年愛した者たちを裏切るだけでなく、もっとも重要なキャラクター"サマンサ"を除外してしまった。

米人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(以下、SATC)』の続編・リブート版として米HBO Maxにて配信予定の『And Just Like That(原題)』が、最悪のアイデアであることを裏付ける理由はたくさんある。理由その1は、SATCシリーズ最新作の映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』(2010年)が公開されてから、すでに10年以上が経ったこと。たかが10年と思うかもしれないが、インターネットの時代からすれば、10年なんて永遠と思えるくらい長い年月だ。理由その2は、映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』が2時間半近く膨れ上がった上映時間、根深いイスラム嫌悪、さらには映画『アラビアのロレンス』をもじったかのようなぎこちない下ネタを理由に批評家たちからことごとく酷評されたこと。それに加え、オリジナルシリーズ放送当時は既存の価値観を覆す革新的な作品と賞賛されたSATCそのものがいまや廃れ、誰もがスリムで白人の異性愛者で、やたらとハイウエストベルトを巻いているニューヨーク・シティの残念な幻に成り下がってしまった事実も挙げられる。

だがリブート版SATCが、最悪であるという一番大きな理由は、主要キャスト4人が3人に減っている点だ。そう、私たちがこよなく愛するシリーズ全体のムードメイカー的存在であり、大のセックス好きのPR会社の社長サマンサ・ジョーンズ(演:キム・キャトラル)がいないのだ。

かねてからサマンサ役のキャトラルは、意地悪な女子グループから事あるごとに仲間外れにされてきたと他のキャスト3人との確執を公言してきた。SATC事情に詳しくない人のために、ここで主要キャストをおさらいしておこう。他の3人とは、悩み多きライターのキャリー・ブラッドショー役のサラ・ジェシカ・パーカー、辛口の弁護士ミランダ・ホッブス役のシンシア・ニクソン、“白人・アングロ=サクソン・プロテスタント”の象徴のようなアートディーラーのシャーロット・ヨーク役のクリスティン・デイヴィスだ(ニューヨーク州郊外のリゾート地ハンプトンズでの撮影中、別荘に招待された・されないをめぐるトラブルがキャストのあいだで勃発)。インタビューでキャトラルは、SATCシリーズは卒業したと繰り返し語ってきた。キャトラルの肩を持つかどうかは、あなたが弱者(キャトラル)の味方である、あるいは知名度を利用した400ドル代のシューズブランド(パーカーが2014年に立ち上げたシューズブランドSJP)のファンであるかなど、立場次第といったところだろう。だが、リブート版SATCの実現を切実に願っていたファンは、心のどこかでサマンサの不在を覚悟していたに違いない。その予感は、先日公開された『And Just Like That(原題)』の予告編によって現実のものとなってしまった。


写真左から:ミランダ・ホッブス役シンシア・ニクソン, キャリー・ブラッドショー役サラ・ジェシカ・パーカー、シャーロット・ヨーク役クリスティン・デイヴィス、映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』のワンシーン(©Warner Bros/Courtesy Everett Collection)


Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE