なぜ人は事実を受け入れられないのか 自己の意見に固執してしまう人間の傾向を考える

さらに、現代社会では自分の意見を裏付ける情報、反対にある意見の信憑性を失わせるデータや証拠を見つけ出すことがとてもたやすくなっています。矛盾するようですが、人は、豊富な情報が得られると、自分の意見にもっと固執するようになるのです。さらにそこに、以前連載の「価値観の似た者同士が集まる危険性 なぜ判断を間違うのか?」でとりあげた「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」、「集団極化」や「集団浅慮」などが加わると、その状態は強化されていきます。

自分の意見を裏付けるデータばかりを求めてしまう傾向を「確証バイアス」と言います。簡単な例では、自分の気に入らない意見には耳を貸さず、都合の良い意見ばかりを受け入れるような人のことです。そしてこれは驚くことに「分析能力の高い人の方が、そうでない人よりも情報を歪めやすい」ということが研究で明らかになっているのです。認知能力が優れている人ほど、情報を合理化して都合の良いように解釈する能力も高くなるため、自分の意見に合わせてデータを歪めてしまうことがあるのです。そのくらい「事前の信念」は強力なものなのです。

こうした問題には、どう対処したら良いのでしょうか? ターリ・シャーロットは「間違いを証明しようとするだけではなく、共通点に基づいて話をすることで、相手の行動に影響を与える」方法を勧めています。たとえば、ワクチンは自閉症の原因ではないということは科学的に証明されていますが、それを信用せずワクチンを拒否する親に、いくら科学的な証拠を示しても、その考えを変える事は難しいことです。しかし、「ワクチンが命に関わる病気から子どもを守れる」ということを伝えることは「子どもの健康を維持したい」という目的が共通するため、意識の変化が生じやすくなる、というような方法を彼女は提示しています。

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