中島みゆき、2021年に聴くべきセレクションアルバム 瀬尾一三とともに振り返る

地上の星 / 中島みゆき

田家:続いて13曲目。こちらは2000年のシングルで、アルバムは『短篇集』に入っておりました。説明の必要もないかもしれませんが、NHKのドキュメンタリー『プロジェクトX』の主題歌でした。このイントロのイメージはすごいですね。

瀬尾:このイントロは僕ですらもう使えないですね。分かっちゃうもん。

田家:「あの曲ね」って言われちゃいますね。

瀬尾:使い回しができないものを作るというのがオリジナルで良いんですけど、墓穴掘る時もありますね(笑)。

田家:これは相当悩んだんでしょう?

瀬尾:悩みましたね。これもテレビ局の方から、イントロは何秒で歌はここで歌が終わってほしいという注文が来たので、とても考えました。番組のタイトルにも合って、番組にも合う且つインパクトもあってという感じで、最終的にこういう形にしました。

田家:ヒントはあったんですか?

瀬尾:何もないですね。『プロジェクトX』というタイトルと第一話のシノプシスのようなものは見せてもらっていましたけど、タイトルも画像もなかったので想像だけで作りました。

田家:この曲は発売130週目でオリコン1位ということで、発売から史上最も時間がかかった曲ですね。

瀬尾:トライアスロンかな(笑)?

田家:長距離をゆっくり進んだ感じですね。

瀬尾:そういうのは中島さん特有だと思う。一周回りの人だから(笑)。

田家:それで中高年の星というイメージがついたと。エール盤最後の曲にするのは決め打ちだった感じですね。

瀬尾:皆さんがご存知で、これで幕が落ちても文句はないだろうと。浸透力があって、番組のおかげで存在感が出ましたよね。

田家:さっきの「空がある限り」は宇宙から地球を見ている歌でした。これは逆ですね。

瀬尾:でも、燕が見ていますけどね。燕から見たら地上にもいっぱい星があるよ、星は上だけではないし、地球上にいっぱい星がある。隠れた人たちにも光るものがあるということで、番組ともリンクしたんです。

田家:Disc1エール盤はこの曲で終わっていますが、ご自分が関わった曲に励まされることはありますか?

瀬尾:すごい質問ですね(笑)。ないことはないですよ。でもアレンジで励まされるのではなくて、彼女の歌とか言葉ですね。僕は自分のやった作品がこっぱずかしいので、アレンジを聴いてすごいとか自惚れられればいいんですけどね。まだそこまでやってないと思うから、定年をやめたんですよ。まだ自分が満足できるものをやっていないなと思って。

田家:ラストツアーはありましたが、これはラストセレクションアルバムということもあるんでしょうか?

瀬尾:エール盤や寄り添い盤というタイトルをついたものはもうないでしょうね。ベストアルバムに『大吟醸』や『大銀幕』はありますけど、意味合いを考えると違いますからね。

Rolling Stone Japan 編集部

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