中島みゆき、2021年に聴くべきセレクションアルバム 瀬尾一三とともに振り返る

空がある限り / 中島みゆき

田家:続いて12曲目「空がある限り」。「ホームにて」の後にこの曲です。空が繋がっているような並びです。オリジナルは2015年のアルバム『組曲 Suite』に収録されていて、このアルバムはアナログ盤も作られています。この曲は1曲目でした。このアゼルバイジャンと女満別には驚きましたね。

瀬尾:僕もデモテープを録っているときに、いきなりアゼルバイジャンと聴こえてきて急いでスマートフォンで調べましたよ。国なんですね(笑)。でも内紛もあるような場所なので、中島さんは色々なところを見てるなと思って。そして女満別が同緯度で日の出・日の入りが同じというところから物語は始まっていくんです。彼女の中でのグローバルな面ですよね。皆繋がっているのに、国境とか勝手に人間のエゴで作っている。でも空はどこで見ても一緒だから、そこを繋げれば国境も何もないわけですしね。

田家:「ホームにて」は帰れない人、帰らない人でしょう。でも「空がある限り」は帰る街ではなくて、暮らす街の歌です。暮らすということに温もりや意味がある、そこに人生があるんじゃないだろうか? という選曲だと思って聴いていました。

瀬尾:「ホームにて」は主人公から見た空なんです。でも、「ホームにて」は宇宙から見た空なんです。空の視点が少し違うんですけど、視点を地上から宇宙に変えるだけでこれだけの歌を作れるのはすごいことですよね。

田家:あなたの傍へいくためにパスポートもビザも必要ない。2020年はパスポートもビザもあっても、どこにも行けない時期でした。まさかこんな時代になるとは思いませんでしたが、そんな中でも人は繋がれるのよ、という曲だと思います。改めてクレジットを見ていて、この曲のキーボードとピアノは小林信吾さん。去年10月にお亡くなりになってしまいました。

瀬尾:しばらくは僕も泣いていました。これは仮定の話ですけど、ツアーができていたら彼は生きていたのではないかと。ツアー中も病気は進んでいましたが、気力で保っていた部分もあると思います。6月までツアーができたら、もう少しもってくれていたのかなと思ったりして。たらればの話ですけど、人間は気力があると身体が動くというか。やらなきゃダメという責任感もあるんですが、それがすごく影響してくるのかなと思ったりして。それが切れた時に、彼ももういいのかなと思ってしまったのかもしれないですけど、病気が進んでしまって。ショックでした。すごく悲しいです。20年も一緒にやってきましたし、僕の右腕として働いてくれたので。

田家:新年早々、不躾に名前を出してしまってすみません。

瀬尾:いえいえ、もう乗り越えましたから大丈夫です。

Rolling Stone Japan 編集部

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