泣いてもいいんだよ / 中島みゆき
田家:続いてDIsc1から8曲目「泣いてもいいんだよ」。この曲から後半に向かうわけですが、2014年のシングル『麦の唄』のカップリング、アルバムは2016年の21世紀ベストセレクション『前途』に収録されていました。ももいろクローバーZに提供した曲ですね。この曲で思い出されることはどんなことですか。
瀬尾:元々ももクロ用の曲なんですが、僕はももクロのアレンジも担当しているんです。更に中島みゆきさん用のアレンジもしないといけないということで、瀬尾一三VS瀬尾一三という構図になりましたね。でもアーティストは全然違う。同じ曲でもアーティストが違えば、アレンジは難しくないと思っているので、そんなに苦労したということはないです。でもアレンジのテーマだけは共通させてました。一番違うのは、ももクロは4拍子の中で2拍目と4拍目にビートが来ますけど、中島さんは3拍目に来るようにしていて。聴いたらちょっと半分落ちているようなビートにしていますね。それが大きな違いです。ドンタンドンタンとリズムが鳴っているのがももクロ、ドンタンドンドンタンと鳴っているのがみゆきさんのアレンジです。
田家:なるほど。それはアーティストに合わせてそうなったわけですね。
瀬尾:そうそう。ちゃんと歌詞を歌ってほしいので(笑)、だからちょっと落ちた感じにしました。でもテンポは変わってないですよ。
田家:みゆきさんがももクロに曲を書くという話を伺った時はどう思われました?
瀬尾:元々曲を書く時に僕にも打診がありまして。だから「面白そうだし、書けばいいんじゃない?」と言いました。
田家:面白そうと思われた根拠は何だったんでしょう。
瀬尾:中島さんがももクロにどんな曲を書くのか? というただの野次馬的な感覚です(笑)。実際出てきたものを聴いて、なるほど、こう来たかと。ちゃんとももクロの世界観もあるし、中島さんの世界観もあって言いたいこともあるし。
田家:ももクロのバージョンのサビの「そーりゃ!」と歌う部分を、中島さんが歌う案はあったんですか?
瀬尾:中島さん一人でそれをやるのはかわいそうだなと思って。なので、何世代も若い人たちを呼んで「そーりゃ」を言わせました(笑)。
田家:「そーりゃ」が効いてる曲だなと思いました。でもアイドルに提供したという印象が全くないですね。
瀬尾:中島さんが感じたアイドル感とももクロ感と両方出てると思うんですよね。ももクロって普通のアイドルとは違いますよね。そんな彼女らアイドルに、大変だろうけどがんばれって歌わせる曲ですよ。すごく皮肉じゃないですか(笑)。
田家:でも、ももクロがそれを歌って不自然じゃないのは、やっぱり彼女らだからなんでしょうね。
瀬尾:そうですね。これが他のアイドルグループだったら、彼女らにそんなひどいことをやらせてません! と事務所から怒られそうですけど(笑)。ももクロは大丈夫でした。