『コブラ会』シーズン3、続編開始当初の面白さを失った残念な三作目

どういうわけか『コブラ会』シーズン2は、『ベスト・キッド2』ではなく『ベスト・キッド3 最後の挑戦』(1989)をモデルとして採用した。シーズン2では、亡霊のようによみがえったクリーズがジョニーのもとからコブラ会を奪い、ミゲルをはじめとする弟子たちに危険人物に変えてしまう。シーズン2の随所には魅力的な場面が散りばめられていて、とりわけダニエルの出番が増えるにつれ(シーズン1では脇役)、オーディエンスはいつまでも若々しいマッチオの無限の魅力を目の当たりにする。だが、シリーズ1では少なくとも半分はコメディでもう半分は真面目だったクリーズの行きすぎた悪役のせいで、シリーズ2の全体的なバランスは崩れてしまった。子どもたちの高校が舞台のクライマックスの長たらしい大乱闘の結果、サムは傷を負い、ミゲルは下半身麻痺状態になり、ロビーは逃走する。馬鹿らしくならない程度にこの手のストーリーを進めていくのは簡単ではないが、シーズン2が何気ないコミカルさを拠りどころとする一方、シーズン1でザブカが見せた意図的なユーモアはほぼ駆逐されていた。

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『コブラ会』シーズン3のいくつかのエピソードでは、ダニエルが沖縄を訪れている。そこで『ベスト・キッド2』で彼が惹かれるヒロインのクミコ(演:タムリン・トミタ)やライバルのチョウゼン(演:ユウジ・オクモト)が再登場するのだ。これらは新シーズン屈指の名シーンであり、その中でもダニエルとクミコがいまは亡きミヤギ大先生のことを思い出しながら、1984年に初めて会ったときの先生と同じ年齢になったことに気づく場面は秀逸だ。沖縄のシーンは、劇中で終始辛い目にあっているダニエルにとってはエモーショナルな中休みだが、徹頭徹尾『ベスト・キッド3』を彷彿とさせる同作の試金石的な物語というよりは、幕間の色合いが強い。

シリーズ3は、大乱闘の数週間後から幕を開ける。ミゲルは入院中で、ロビーは行方不明。サムは、トリー(演:ペイトン・リスト)との乱闘による心的外傷ストレス障害が原因のフラッシュバックに苦しんでいる。ジョニーは、ミゲルの大怪我の原因を作ったと自分を責め、学校はすべての武術を禁止した。乱闘の責任をほぼ全面的に引き受けるダニエルは、学校の教育委員会の会議で「この件を空手版『フットルース』的な事件にする必要はない」と主張する。

その一方、クリーズは何かを企みながら、まだ周囲をうろついていている……。だが、彼のエンドゲームが何であるかははっきりしておらず、サディズム以外の何かに興味があるかどうかもわからない。クリーズは弟子を追い出しては新しい弟子を引き入れ、ミゲルの親友の元オタクでコブラ会屈指の冷血漢であるホーク(演:ジェイコブ・バートランド)でさえ、この狂気じみた男のそばにいることに疑問を抱く。いくつかのエピソードでは、ベトナム戦争時代(*註:2)のクリーズの回想シーンがフィーチャーされており、そこでこのような人間になった理由と彼の動機を説明しようとしている。だが、こうした回想シーンは笑えるくらい場違いな印象を与えるし、まるで『天才マックスの世界』(1998)の風変わりな主人公マックス・フィッシャーが突然プロデューサーになったかと思うほど唐突だ。


(*註:2) この点は、『ベスト・キッド3』の主な悪役である極悪社長テリー・シルバーのオリジンストーリーと重なる。『ベスト・キッド3』の良いところは、彼について多くを語らなかった点だ。クリーズの司令官役を演じているのはテリー・セルピコという俳優で、マッチオとともに80年代のティーンエイジャー向け映画で人気を博したアンソニー・マイケル・ホールに不気味なくらい似ている。そのため、X世代のノスタルジーに訴えかける同作にセルピコを起用するのは紛らわしいように思える。というのも、ベトナム戦争のシーンがクリーズとFarmer Ted(訳注:牧場をテーマにしたイギリスのアミューズメント施設)の架空のコラボの予告編であるような印象を与えるからだ。


Translated by Shoko Natori

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