『コブラ会』シーズン3、続編開始当初の面白さを失った残念な三作目

『コブラ会』シーズン3で再集結したキャストのウィリアム・ザブカ、マーティン・コーヴ、ラルフ・マッチオ(写真左から)。 NETFLIX

シーズン1と2は、かつて『ベスト・キッド』に夢中になったファンにとって魅力的な作品だったが、今回公開されたシーズン3は、“3作目は駄作”というジンクスを地で行くような続編となってしまった。

※文中ネタバレを含む箇所があります。

『ベスト・キッド』シリーズは、3作目で本格的に進むべき道を見失ってしまった。ダニエル・ラルーソ(演:ラルフ・マッチオ)といういじめられっ子のティーンエイジャーがミスター・ミヤギ(演:パット・モリタ)という頼れる老賢人のもとで空手を学ぶというストーリーの1984年の映画『ベスト・キッド』は、負け犬の奮闘を描いた名作・スポーツ映画/成長物語だ。続編『ベスト・キッド2』(1986)はいささかやりすぎだったかもしれないが、舞台を沖縄に移してミヤギのパーソナルな面を重視するストーリーにすることで変化をもたらした(それに続編のサントラに収録されているピーター・セテラの「Glory of Love」はいま聴いてもシビれる)。

しかしながら『コブラ会』シーズン3は、“3作目は駄作”というジンクスを地で行くような続編だ。同作のストーリーは、コブラ会の創始者ジョン・クリーズ(演:マーティン・コーヴ)の中途半端な復讐を中心に展開する。クリーズは、『ベスト・キッド』の終盤で愛弟子のジョニー・ロレンス(演:ウィリアム・ザブカ)がダニエルに敗れたことをいまも根に持っているのだ。同作のクリーズは、かつてのように卑劣だが共感できるところもあるアンチ・ミヤギ的な人間味ある悪役ではなく、行きすぎたレベルのソシオパスとして描かれていて、空手道場のメンツを潰したダニエルとミヤギに対する仕返し以外は何も考えていないようだ。その一方、ダニエルは護身を説くミヤギ道からコブラ会流の危険な考え方へとシフトするのだが、その理由は、まったくもって理解不能。同作は、多くの点で駄作といえるが、ダニエル・ラルーソというおなじみのキャラクターが毎年お決まりのように危機にさらされ続ける姿は、馬鹿らしささえ感じさせる。

ダニエルとジョニーは、YouTube Premiumのオリジナルドラマシリーズ『コブラ会』(*註:1)で2018年にカムバックを果たした。同作では、ふたりの立場は巧みにも入れ替わっていた。だが、『コブラ会』シーズン3でどん底の日々を送っているのはジョニー(それでもミヤギ同様、便利屋として働いている)のほうで、彼はミゲル(演:ショロ・マリデュエニャ)という同じ建物で暮らす少年に空手を教えている。ミゲルは、若い頃のダニエルによく似ている。対するダニエルは名声と富を手に入れ、どういうわけかジョニーの息子のロビー(演:タナー・ブキャナン)と自分の娘のサム(メアリー・マウサー)に空手を教えることになる。『コブラ会』シーズン1はちょっとした奇跡だった。映画『ベスト・キッド』の要素を巧みにミックス&マッチさせて大胆なまでにノスタルジックだったシーズン1は、新しさという要素はなかったかもしれないが、数十年ぶりにあの時代を生きているような気分を味わわせてくれた。


(*註:1)読者は、この頃すでに『コブラ会』とYouTube Premiumが存在していたことを知らないだろう。その後、YouTubeはオリジナルドラマ事業から撤退し、『コブラ会』のシーズン1と2は最終的にNetflixの手に渡った。Netflixユーザーは新シリーズとして『コブラ会』のシーズン1と2を歓迎した。2021年1月1日に配信されたシーズン3は、Netflix初の『コブラ会』シリーズである。


Translated by Shoko Natori

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