川谷絵音が振り返る2020年の音楽シーン

テイラー・スウィフトに思うこと

―では今度は、本国アメリカのローリングストーン誌(以下、RS)による2020年の年間ベストアルバムを見てもらおうと思います。

川谷:こっちのランキングの方が俺は好きですね。単純に数字だけで見たランキングだと「そうだよね」ってなるんで。

―こっちにはバンドも何組かいますね。ハイムフリート・フォクシーズだったり。

川谷:ハイムよかったですね。2020年のベストに挙げてる人も多いんじゃないですか?

―多いですね。1位のテイラー・スウィフトに関してはどうですか?

川谷:今まではそんなに興味なくて、「テラスハウス」の曲ってイメージが強かったんですけど(笑)。ドキュメンタリー(『ミス・アメリカーナ』)を観て、人間的に興味が湧いたし、改めて音楽的な人なんだなって思いましたね。カントリーっていうジャンルが当時よくわからなかったんですが、そんなことは関係なくテイラーは歌が良いから聴くようになりました。



『folklore』はコロナ化の中で急遽作られたアルバムで、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーやボン・イヴェールとのコラボレーションも話題を呼びました。

川谷:キャリアを積み重ねたことで音楽的なアウトプットができるようになって、ポップスで成功した今だからこそできたことなんだろうなって。ドキュメンタリーでも、これまでは人の期待に応えようとして、政治批判をしなかった話をしてたじゃないですか? 初めてトランプを批判するツイートをする瞬間とか、ああいう光景を押さえられるのがアメリカだなって思いますね。カニエ(・ウェスト)とビーフをやってたり、そういうのも日本だとないから、誤解を恐れずに言うと僕はあれを観て少し羨ましかったんですよ。でも、日本だと炎上っていう名の元でエンタメに消化しないじゃないですか。だからああいうドキュメンタリーを作るのは難しいと思います。海外は全て正直かというとそうではないかもしれないんですが、日本のドキュメンタリーは絶対に美談にするためのウソが入っちゃう。入れないと炎上しちゃうから。まあ日本の話は置いといて、テイラーはああいう姿を見せたことで、『folklore』というアルバムがより響くようになったんじゃないかな。だから、あのドキュメンタリー込みで1位っていうことなのかなって。

―同感です。あのドキュメンタリーがアルバムに説得力を与えたと思います。

川谷:ただの成り上がりじゃなくて、成り上がってからのここまでを長く追ってたのがよかったんだと思いますね。ちなみに、Pitchforkはレビューで何点つけてたんですか?

8.0ですね。

川谷:そうか、もっと辛口にいきそうですけどね。あとはセレーナ・ゴメスもよかったし、歌姫がめっちゃ頑張ってますね。アリアナ・グランデもそうですけど、ちゃんと良い音楽作ってるなって。日本で歌姫というと、宇多田ヒカルさんや椎名林檎さんがいますけど、最近の人だと誰も思いつかないなと。海外はテイラーもそうだし、デュア・リパもそうだし、歌姫が頑張ってる。女性アーティストが台頭してきた年でもあるんじゃないですか?

―去年のグラミー以降、その流れは明確になったように思います。

川谷:ビリー・アイリッシュがその流れを決定付けた感じもありますしね。

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