ヒットを量産するTikTok、当事者たちが明かすサクセスストーリーの裏側

左からミーガン・ジー・スタリオン、ジェイソン・デルーロ、24kGoldn(Illustration by Nazario Graziano for Rolling Stone. Photographs in illustration by John Parra/Getty Images; Pier Marcho Tacca/Redferns; John Sciulli/Getty Images)


「一発屋」の濫造を懸念する声も

近頃、レーベルはかつてないほどTikTokのサポートを貪欲に求めるようになった。セールスやストリーミング回数アップの推進力となるツアー活動に頼れないコロナ時代において、そうした傾向はとりわけ顕著だ。TikTokのギリック氏は言う。「その点、私たちはいまもフルパワーです。音楽業界は方向転換を強いられてますけどね」。

米RCAレコードのデジタル・マーケティング部門SVPを務めるタレク・アルハムドゥニ氏は、こうした方向転換は大手レーベルの予算にも反映されていると指摘する。「あちこちでアーティストのプロモーション活動を行うための費用、テレビや授賞式でパフォーマンスを披露するための費用といった大金——私たちはいま、こうした費用を負担していません」と、彼は語る。

TikTokが「Old Town Road」のヒットの立役者となって以来、大手レーベルにとってTikTokはますます気になる存在となった。「TikTokの仕組みを宣伝するのに多くの時間を割いてきました——そんな時はたいてい、複雑な反応に直面したものです」とTikTokのミュージック・パートナーシップ/アーティスト・リレーションズ部門のシニア・マネージャー、イザベル・キンテロ・アノナス氏は言う。「しかし、この12カ月でそうした態度はガラリと変わりました」。

ミーガン・ジー・スタリオンのヒット曲「Savage」もそうだった。当初ミーガンのチームは、シングル「Captain Hook」のキャンペーンを始めるにあたり、TikTokにコンタクトを取ってきたとアノナス氏は語る。「Captain Hook」の成果は上々だったものの、3月初頭に早くからネット上で人気を博していたダンス・チャレンジ企画のおかげで「Savage」が頭角を現した。そこからバナー広告を打ったり、ブッシュ通知を配信したりと、TikTokは「Savage」をSoundsページで宣伝することで同楽曲の人気を高めるのに一役買った。いまや「Savage」は3100万本を超える動画で使われており、同アプリが提供したデータによれば、3月単独の視聴回数は40億回を超える。4月にビヨンセは「Savage」に飛びつき、ヴァースの部分で「TikTok」を名指ししている。その後、まもなくして同楽曲はチャート1位に輝いた。

@keke.janajah

NEW DANCE ALERT! if u use my dance tag me so i can see @theestallion #writethelyrics #PlayWithLife #foyou #fyp #foryoupage #newdance #savage

♬ Savage - Megan Thee Stallion


たしかに、TikTokがヒット曲の繁殖地であることに異論はない。だが同アプリは、こうした新進気鋭のアーティストをお茶の間の有名人に変える力があることをまだ証明できていない。現時点でリル・ナズ・Xを除いて、TikTokで発掘されたパフォーマーのなかに、つかの間の名声を確固たるキャリアに結びつけた者は一握りしかいない。音楽業界の幹部のなかには、同アプリの長期的に輝けるスターを生み出す能力を疑問視する向きもある。

TikTokでバイラルヒットを生んだ複数のアーティストのマネジメントを担当している、チオーキー・“ストレッチ”・マッコイ氏を例に挙げよう。同アプリの音楽チームは、ラッパーのセージ・ザ・ジェミニによる2013年の楽曲「Red Nose」のように、TikTokで人気のあるアーティストの、過去の知られざる代表作をマッコイ氏に紹介した。しかし、インディレーベルBlac Noize!の幹部でもあるマッコイ氏は、TikTokで発掘したアーティストは、まだ誰ひとりとして同レーベルとの契約に至っていないと慎重な姿勢を示す。

TikTokでヒットを生むためには、多額のマーケティング予算があるに越したことはない。人気TikTokerが集結した良くも悪くも話題のクリエイター集団、Sway Houseも担当している米大手エージェンシーICMのクリス・ソーテル氏は、依頼された曲のスニペットを(人気TikTokerに)使ってもらうことで、レーベルに2万〜5万ドル(約210万円〜530万円)は請求できると語る。これはデジタル・マーケティング担当からすれば、7400万人のフォロワーを抱えるTikTokでもっとも人気のクリエイター、チャーリー・ダメリオのような人材なら喜んで支払う金額だ。その一方、人気TikTokerの別のエージェントは、次のように指摘する。超有名ミュージシャンは多くの場合、TikTokで自分の曲を宣伝するにあたって、費用を支払うことなく取引を進めることができる——彼らはその代わりに、自らのブランド力を利用することで、TikTokerによる投稿をブーストさせているのだと。Sway Houseのなかでも特に人気のクリエイター数人は、完全にTikTokから撤退して、同アプリのライバル的存在であるTrillerに移行すると宣言したものの、現時点で本当に撤退した者はひとりもいない。

結局のところTikTokの魅力は、ファンがエンゲージメントの推進力となっている点と切っても切り離せない。ある楽曲がどれだけ多くの動画で使用されようとも、ファンがその楽曲を気に入って聴き込むには別のプラットフォームが必要で、そこで初めてヒットというものが真の価値を持つのだ。

「私たちは、このアプリが何かを切り拓く場所だとは考えていません」とマッコイ氏は言う。「楽曲がTikTokで他の何かと結びつくのは素晴らしいことですが……だからといって(TikTokを)離れたところまで、人々がその曲を追いかけるとも限りません」。

Translated by Shoko Natori

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