ブライアン・イーノが語る、ポストコロナ社会への提言とこれからの音楽体験

ブライアン・イーノ(Photo by Cecily Eno)


衰えを知らない創作意欲
音楽づくりと映画への関心

ーあなた自身の音楽活動で言うと、コラボワークでの新作からカタログの再発までリリースの続いた一年だったかと思います。ロジャー・イーノとの『Mixing Colours』や、『Film Music 1976 – 2020』など。

イーノ:そうだね。それに実は、今年は新しい音楽もたくさん作った。600曲はあるはずだ。かなり多忙だった。でも、まだ世に出してはいない。中にはそのまま発表しないものもあるな。というのも、一つのアイデアをどう形にするかの研究や実践、あるいは練習曲も含まれているから。他にも、映画やテレビ向けに制作したものもある。特にイギリス制作のドラマ『Top Boy』。

ー『Film Music 1976 – 2020』にテーマ曲が収録されていましたね。



イーノ:そう。もうすぐ第4シーズンが始まるのだけど、それに向けて新しい音楽を書き下ろした。あとは、ジュリアン・アサンジ(ウィキリークス共同創設者。ロンドンの刑務所で服役中)のためにも音楽を書き下ろした。彼がアメリカに強制送還されないよう、彼にまつわる映画が制作されている。その映画のための音楽だね。他にも2件ほどある。きっと来年たくさん出ることになるだろう。

ーいわゆるフィルム・ミュージックに関して、最近何か刺激をうけるような作品はありましたか?

イーノ:つい先日観た映画で音楽がいいと思ったものがあったけど、名前がすぐに出てこないな。作中で音楽はさほど多くは使われていないのだけど、その使い方が秀逸なんだ。「これはいいサウンドトラックだ!」と思わず唸ってしまったよ。音楽を担当しているのはKyrre Kvamという人物で、彼は俳優でもあり作曲家でもある……映画のタイトルを思い出したよ。『The Ground Beneath Her Feet』という作品だ。



ー映画もよくご覧になってるんですね。

イーノ:家で映像作品を見るのは好きだよ。

ーNetflixも使ってますか?

イーノ:NetflixよりもMUBIというアート・フィルム専門の配信サービスのほうを多く利用している。そこは、一度に30本しかラインアップがなくて、頻繁に新しい作品を取りれて入れ替えを行っているんだ。配信する作品をしっかり選りすぐっているところが気に入っている。個人的にルールがあって、アメリカの映画はできるだけ見ないようにしているんだ。お高くとまっているだけでしかないんだけど(笑)、見ていてイライラする。日本映画、ポーランド映画、オーストリア映画、ノルウェー映画、オーストラリア映画を見るほうが新鮮だ。世界にはいくつもの言語が存在するわけだからね。

ーコロナ禍にラジオを通して多くの音楽を聴き、自然の中を散歩したり、本を読んだり、映画を観たりして過ごしたことが、先ほどおっしゃったような多作ぶりに繋がったと思いますか。

イーノ:ああ、非常に創造性を駆り立てられた年だったと言えるだろう。音楽に限らずだ。日常的なことでいえば、庭の手入れをするようにもなった。この家にちょっとした庭があって、今年は自分でそこの手入れをしようと決めたんだ。それがまた実に充実していた。スタジオで音楽を少し作ったあと、庭に出て土いじりをする。生活のなかで身体を動かす時間があることが重要だと思っている。身体を動かさずに物事を済ませるのは簡単だ。コンピューターの画面だけを見て1日を過ごすことだってできる。今、こうしているようにね。でも、身体を使って、手を汚すことも、非常に大事なことだと思っているよ。

Translated by Yuriko Banno

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