神はサイコロを振らない、4人が語る「影響を受けた本」

「目蓋」を書き終えた今は、「しばらくこれを越えるの大変やろな」と思っています(柳田)

ー読んだ本が、音楽活動に何かしらフィードバックされることってありますか?

柳田 どうだろう……。でも、官能小説を読んだときに、それが作詞にめちゃめちゃ影響与えたことはありましたね。例えば、女の子の耳をハミハミするじゃないですか。

ー「するじゃないですか」と言われても。

柳田 あはははは。ハミハミすることを、官能小説では「耳朶をはむ」と表現するらしくて。それにめちゃ感動しちゃったんです。まあ、「はむ」だから「ハミハミ」になったんだろうけど。とにかくその表現に打ち抜かれまして、そこから官能小説をバーっと読み漁ったことがありましたね。官能小説は、今後もガンガン読んでいきたいのでオススメあれば教えて欲しいです。

ーそういえばあいみょんも、官能小説から歌詞のヒントを得ることがあると、以前『タモリ倶楽部』で話していましたね。

柳田 え! そうなんですか。いや、でもまじで比喩の仕方とかが一々面白いんですよ。あと、メジャー配信第2弾シングルの「目蓋」は、さっき紹介した小説『生きてるだけで、愛。』を読んだその日のうちに書き上げた曲なんですよ。



ーそのくらい、ご自身の経験とリンクした小説だったんですね。

柳田 昔の話ですけど、心が不安定な女の子と一緒にいるのって、本当にしんどいんです。しんどいんですけどでも「手放そう」とは思わないんですよね。それは愛しているからこそ、しんどさすらも求めている自分がいるから。さっき話したように、「歌詞のネタになるぞ」と悪魔の囁きをする自分がいる一方で(笑)、「心の底から愛している」という気持ちも確かにあって。それをこの小説を読んでいるときに思い出させてもらったので、「曲にするしかない!」と。

ーこの曲は、映画『リトル・サブカル・ウォーズ ヴィレヴァン!の逆襲』の書き下ろし主題歌でもあるんですよね?

柳田 ぜひ映画も観てほしいです。内容自体はドタバタのコメディ仕立てで、ドラマシリーズの時は忘れらんねえよさんがそれをそのまま曲にしたような主題歌を歌っていましたが、今回は劇場版にするにあたり「正統派バラードをぶち込もう」という狙いが監督にあったらしく、それでこの「目蓋」のデモを聞いてもらったところ気に入ってもらい採用となりました。自分の気持ちをそのままストレートに表現したものが、映画との相乗効果で面白いことになっていると思います。

ーレコーディングはいかがでしたか?

柳田 歌録りの時は、泣いて歌えなくなってしまいました。黒川くんがずっといてくれたんですけど、ワンフレーズごとに涙が止まらなくなっちゃう状態だったんですよね。ただ、テイクは直していなくて。その時の感情をそのまま閉じ込めた歌になっているので、自分的にはかなりヤバイ曲というか。いまだに聴くだけでウルウルしてしまいます(笑)。今回、ストレートなバラードなので電子音など一切使わずギターもアコギ1本。後はピアノとベース、ドラムはブラシを使って口径の小さなスネアを優しく叩いてもらいました。あとは、公園で子供のはしゃぐ声や、シャワールームの音などを入れることで、恋人との「生活」をうまく表せたと思っています。

ー手応えはいかがですか?

柳田 これまで自分が書いてきた曲の中でも、圧倒的にナンバーワンの仕上がりになりました。今までは、どんなにいい曲が書けても「これ以上の曲は書けないな」なんて思ったことなかったんですけど、「目蓋」を書き終えた今は、「しばらくこれを越えるの大変やろな」と思っていますね(笑)。

神はサイコロを振らない
福岡発の4人組ロックバンド。全作詞作曲を手掛けるリーダー柳田周作(Vo)は、祖母にもらったアコギを用いて5歳で作曲を始める。弾き語りのネット配信に没頭したソロ期を経て、進学した福岡の大学で出会った吉田喜一(Gt)、桐木岳貢(Ba)、黒川亮介(Dr)に声を掛け、2015年にバンド結成。2019年にミニアルバム2作をインディーズリリース。2020年7月にメジャー第一弾デジタルシングル「泡沫花火」を発表。11月に最新デジタルEP『文化的特異点』をリリースした。 2021年1月、新曲となるデジタルシングル「クロノグラフ彗星」を発表。




「クロノグラフ彗星」
神はサイコロを振らない
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