神はサイコロを振らない、4人が語る「影響を受けた本」

左から桐木岳貢(Ba)、黒川亮介(Dr)、柳田周作(Vo)、吉田喜一(Gt)



何かハプニングが起きると「これはいい曲が書ける!」と俯瞰で考えている自分がいる(柳田)

柳田 僕の3冊目は、本谷由希子の『生きてるだけで、愛。』という小説です。これは躁鬱病を抱え、過眠に悩まされている女性が主人公で、彼女と同棲している男性が出てくるのですが、これまた自分も同じような恋愛をしたことがありまして……。

ー柳田さんは一貫していますね(笑)。

柳田 当時のことをすごく思い出します。僕自身は心身ともに健康なんですけど、同じ空間に長く一緒にいると、気持ちが分かってしまうんですよね。もちろん、完全には理解できない。相手の心が壊れてしまうトリガーがどこにあるか分からないし「え、なんで?」と思うようなこともたくさんありました。でも、その当時の彼女の視点が『生きてるだけで、愛。』を読んでいると分かるというか。「ああ、こういうことだったんだな」って。

ー当時のことを再体験するような感じなんですかね。

柳田 あと、これは僕の人間性の問題ですが、何かハプニングが起きると「これはいい曲が書ける!」と俯瞰で考えている自分がいるんです(笑)。『おやすみプンプン』に出てくる神様みたいな感じで、もう一人の自分が悪魔の囁きをしてくる。「もう一人」どころか、俯瞰で見ている自分が常に3人くらいいるんですよ。どんなに悲しいことがあっても、どこかでそれをニヤニヤしながら見てるというか。

ーそれって、曲を作るようになる前からあったのですか?

柳田 3歳くらいからありました(笑)。当時、なんの漫画か忘れちゃったんですけど、家で読んでいて感動で泣いていたら、もう一人の自分が出てきて「うわ、泣いてるよこいつ」って言うんです。なんていうか、常にカメラが回っている感じ。ずっと映画やドラマの主人公になっているような気分で生きているんですよね。

ー思ったのは、きっと柳田さんの中には『生きてるだけで、愛。』の主人公みたいな女性に惹かれてしまう傾向があるのかもしれないですね。

柳田 引き当てちゃうんです(笑)。というか、そもそもそうじゃなかった子が、どんどんそうなっていっちゃうんですよ。だから僕のせいなんです。

桐木 僕は、町屋亮介の『1R1分34秒』という小説を最後に紹介します。プロボクサーの話ですが、自分と重ね合わせて読むところが多いですね。あと、一つの出来事に対する心理描写がものすごく細かいんですよ。「なぜボクシングをしているんだろう?」と自問自答するシーンなど、僕自身が「なぜ音楽をやっているのか?」で悩んでいる時期に読んだのでメチャメチャ感情移入してしまいました。

ー桐木さんが本を選ぶときの条件として、「主人公に感情できるか否か?」は結構大きいのかなと思いました。

桐木 確かに。めっちゃ強いわけではなく、かといって弱すぎもしない「普通の人」が主人公の作品を好きになることが多いですね。いつも、自分と重ね合わせながら読んでいます。

黒川 僕が最後に紹介するのは、湊かなえの『少女』。桜井由紀と草野敦子という2人の女子高生が主人公で、転入生の紫織から親友の自殺について話を聞いた彼女たちが、「自分も人の死を目の当たりにしたい」と思うようになるストーリーです。夏休みを利用し、人が死ぬ瞬間を見るために行動する2人を由紀視点、敦子視点で描いていくのが面白かった。読んでいると「あれ、これはどっち目線?」という瞬間もあるのですが、最後まで読むと章ごとに付けられたアスタリスクの数で分けていることが判明する。それを知って読み直してみると、初見では気づかなかったことがたくさんあるんですよ。見事だなあと思いました。

ー湊かなえさんの作品はよく映像化されていますよね。

黒川 『告白』は観ました。『少女』が映画になっているのは知らなかったので、近いうちに観てみたいです。小説とはどんな違いがあるのかを確かめるのが楽しみですね。それに、湊さんは他にも『贖罪』など気になる作品がたくさんあります。

ー柳田さんは、もう1冊紹介してくれるそうですね。

柳田 これまでの3冊とは毛色が違うんですけど、葦原大介のコミック『ワールドトリガー』を紹介したいです。もともと『ジャンプ』に掲載されていて、今は『ジャンプスクエア』で連載している漫画なのですが、ジャンルでいうと「SFアクション」になるのかな。でも、単なる「SFアクション」ではなくて、基本的に戦闘シーンは「頭脳戦」なんです。そもそも主人公は全然強くなくて、どちらかといえば激弱なんですけど、弱い人間なりの戦い方というか。ひたすら頭を使って強い奴らをぶっ倒していく。男の子が好きな漫画って、主人公が肉体的にも強くて周りをなぎ倒していく系だと思うし、その方が痛快ですけど、弱い奴がなんとか頭を使って作戦を練って、仲間も巻き込んで戦うところがグッとくるんですよね。僕自身、今まであまりアクション系の漫画を通ってこなかったんですけど、その頭脳戦が面白くていつの間にか読み耽っていました。ちょっとだけ自分の好きな範囲が広がりそうな気がしますね。今までずっと暗い小説やコミックばっかり読んでいたので(笑)。『ワールドトリガー』が僕の世界を広げてくれそうです。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE