17歳の美少女、ビアンカ・デヴィンズの短い生涯と拡散された死|2020年ベスト

クラークの意図

7時30分頃、911にクラークから通報が入った。ビアンカが通っていた高校から1マイルほど先にある行き止まりの道路、ポー・ストリートにいると告げた。コロマト警部補によると、クラークは電話口の救急隊員に無理心中を図ったこと、死んだ後は臓器を提供することを告げ、「これから無理心中の自殺パートに取り掛かるんだ」と言って電話を切った。

警察によると、数分後現場に駆け付けた警官が、緑色の防水シートに横たわるクラークを見つけた。数メートル先には破壊されたラップトップとハードディスクから火が上がっていた。地面には「俺のことを忘れられないだろう」という文字がスプレーで書かれており、その様子がInstagramで彼のフォロワーにライブ配信されていた。そしてクラークは喉を切り裂き、自撮りした画像に「灰は灰に返る」というキャプションをつけて、Instagramのストーリーに上げた。「あんなに痛みを伴うとは本人も思っていなかったんでしょうね」と、ピーター・パラディノ捜査官は言う。「(のたうち回って)、痛みと格闘していました」 。警察官の1人がビアンカはどこだと尋ねると、クラークはコロマト警部補曰く、「さあどこだろうね」と叫んだ。その時1人の警察官が、防水シートの下から黒髪が覗いているのを発見した。


逮捕直後のブランドン・クラーク(写真提供:オナイダ郡保安官事務所)

自殺を図ったクラークは一命を取り留めた。翌日医師から尋問の許可を得て、パラディノ捜査官は病室を訪れた。裁判を控えているため、警察は供述の詳しい内容を明らかにすることはできないが、コロマト警部補曰く「彼は(事件について)テレビでどう報じられたのかをとても知りたがっていた、とだけお伝えしましょう」

パラディノ捜査官の推測では、クラークの自供とDiscordやInstagramに投稿された証拠から判断するに、彼が発信したかったメッセージはただひとつ。彼のコミュニティでの表現を借りれば、自分は単なるビアンカの「ヘタレ追っかけ」ではなく、「誰も手出しすることのできない支配する側の人間」だというものだ。彼は彼女に何かを期待していたが、彼女がそれに応えられなかった、または応えようとしなかったために、彼女と全世界に思い知らせなくてはならなくなった。「俺のような人間にそんな仕打ちはさせない。こういう目に遭うぞ」と。

ソーシャルメディアはさらに恐怖を煽るだけだった。ビアンカの遺体の写真がDiscordに投稿されていたため、事件から数時間のうちに「#ripbianca」というハッシュタグがTwitterに飛び交った。ビアンカの事件はたちまち、自分の主張を重ね合わせるある種のキャンバスになった。ビアンカはアセクシャルだったとか(その可能性はある)、精神疾患を患っていたとか(事実)、ハードドラッグに溺れていたとか(家族と友人の証言によれば嘘)、様々な噂が広がった。中には彼女の事件を利用して、「有害な男らしさ」や4chanの女性蔑視の風潮を非難する者もいた。他には彼女が「インセル負け犬追っかけ」に「斬首された」と伝える者もいた。だがビアンカは首を落とされてもいなければ、クラークも従来の意味でのインセルではない――コロマト警部補は、ビアンカとクラークの携帯からの情報を見る限り、2人が「親密な関係だったことは間違いない」と言う。

Translated by Akiko Kato

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