モー娘。小田さくらが語る「実力派」の葛藤とプロ意識

新曲「純情エビデンス/ギューされたいだけなのに」について

ー他のインタビューで「去年初めてスランプになった。自分の歌に不満はなかったのに疲労が蓄積したのか高音が思うように出なくなった」と語っていました。そこを乗り越えてようやくというタイミングでコロナ禍になってしまった。でも、今の「もののけ姫」の話のように、考えようによってはヴォーカリストとしてさらにパワーアップできる機会を得たとも言えますよね。「純情エビデンス」とか聴くとすごく感じます。

小田:いわゆるスランプというものを完全に抜けたのかと言われれば、私はまだ正直スランプだと思っています。10代の頃は成長の速度が凄くて、毎回手応えがあった。その時に比べたら絶好調ではないなぁと思いつつ、それでも過去の自分の動画を見て今あらためて聴くと音程外れてたりして、やっぱり今の私の方がちゃんとしてるなと。スランプだと思った時は本当にスランプでした。声が出なかったので。でも今のこのモヤモヤっていうのは、単純に自分のことを過信しているからなんだろうなって。私だったらこれぐらい出来るって自惚れてただけで、だったら自分の実力に沿った期待を自分にしてあげようと思ったんです。それこそファンの方が私に期待するのも、それは信頼の証だと思いますし、そこに追いつくのが私のお仕事ですけど、せめて自分の基準に合わせたものを自分に期待して、その基準をクリアしたら、ちゃんと自分のことを褒めてあげることを個人的な管理としてはやっていきたいなと思っているのが最近です。超期待しちゃってたので、自分に。

自分の歌が好きだったから完璧を求めてたんです。それこそ「紅蓮華」は今の自分にはできないと思って選んでなかった。私の実力じゃ無理だと思って。それでも評価していただけたから良かったなって。私自身は全部ダメって思ってたんですけど、思ったより歌えているところもありましたし、そういうところをちゃんと自分でも拾って、とにかく褒めてあげたいなって。スランプの時期は、自分にダメダメしか言ってなかったんです。今度からはちゃんと出来たところを褒めるっていう作業を自分にしてあげる2021年にしたいなと思っています。



ーつんく♂さんのライナーノーツには「過去からの脱却、次のステージへのステップアップ」って書いてましたけど、モーニング娘。が築いてきた偉大なレガシー=受け継いできたものも武器にしていこうという感覚はありました? 

小田:つんく♂さんって「立場」って言葉を使うことが多いじゃないですか。私たちからしたらつんく♂さんは教科書のような存在なのに、つんく♂さんは自分の変化を止めようとしない……ってところがモーニング娘。の根本にはあって。モーニング娘。の23年の歴史って、つんく♂さんの血でもあるわけです。私たちは全員つんく♂さんの曲を、つんく♂さんが思うように表現して、つんく♂さんが好きなパフォーマンスをする。そこまでの「立場」を確立したつんく♂さん自身が、まだ変化しなきゃと思って、新しいものを取り入れて、音楽もいろいろ勉強して、いろんな人に会いに行ったりしてっていうのを見ていると、自分の未熟さを感じます。たかがスランプを乗り越えたくらいで、まだまだだなって。自分はモーニング娘。に8年在籍していて、このままでいいと思ったことは一度もないので、その精神は持ち続けていきたいなと思っています。

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