2020年に激変した音楽ビジネス、絶対知っておくべき12の事柄

Photographs used in Illustration: Beth Garrabrandt (Swift); William Claxton(Dylan); Phone (DPA/AP Images)


11. ライブミュージックの未来

くぐもった音とアンバランスなミックス、グリッチと遅延、そしてiPhoneで撮影したムービーからなるバーチャルコンサートを、心から楽しんでいる人などいるのだろうか? 正直なところ、パンデミックによる隔離生活が始まった当初のライブストリーミングコンサートは、音楽業界において不可欠かつ大きな収入源というよりはギミック、あるいは苦肉の策として登場したマーケティング手法としか思えなかった。しかし、状況は今や一変した。PatreonやMaestroをはじめとするライブストリーミング企業は、驚くべきペースで成長し続けている。今年頭の時点で、後者が1カ月の間に開催する有料バーチャルコンサートの平均数は50公演だったが、夏にはその数が200公演に達した。高クオリティのコンテンツ制作は高額だが、それ以上の価値を生み出し得る。デュア・リパが今年行った唯一のバーチャルコンサートの制作期間は数カ月間におよび、総コストは150万ドル以上に達したが、1枚10ドルのチケットが約28万4000枚売れたことを考えれば、彼女が多額の利益を得たことは間違いない。より大きな成果を上げたのはBTSで、今年開催された一度きりのバーチャルイベントBang Bang Conで、彼らは約2000万ドルを稼いだ。こういった機会は、既に高い知名度を誇っているミレニアル世代のスターたちに限られているわけではない。オンラインプレゼンスよりも過酷なツアースケジュールで知られる往年のカントリー歌手たちもまた、最近ではその恩恵に預かり始めている。本誌は8月に、週に5日のペースでMaestroでライブストリーミングを実施しているMelissa Etheridgeは、1年間で約60万ドルの利益を同プラットフォームから得るはずだと報じた。

何カ月間も営業できずにいる各ベニューも、そこに突破口を見出している。ニューヨークのLe Poisson Rougeは9月に、独自のサブスクリプションサービスを開始した。最近では、ライブストリーミングで収益を得ようとする取り組みを支えようという気運が消費者の間で高まっている。エレクトロニックデュオのボブ・モーゼズは、元々はビデオゲームのユーザー向けだったプラットフォームTwitchでライブパフォーマンスを配信しており、サブスクリプションの月額は4.99ドルから24.99ドルに設定されている。パフォーマンスのライブストリーミングというビジネスは、パンデミック収束後も続くのだろうか? 世界のどこからでも楽しめること、そして来年に予定されているデュア・リパの有観客コンサートのチケット売上が70パーセント増加したことを考えれば、答えはイエスだろう。サブスクリプション、または1度きりのチケット販売というビジネスモデルが今後も成立するかどうかは不透明だが。— S.H.

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12. アンバンドルと再バンドル

2010年代、IT系スタートアップ各社は魅力的で斬新なアイディアによって、既に確立されていたメディアのエコシステムをから顧客を奪おうとした。そして登場したのが、膨大な量の音楽を無料で楽しめるプラットフォームや、あらゆる映画やテレビ番組をいつでも安価で提供するサービスだ。毎月複数のサービスから請求が送られてくるケースがごく一般的な現在、それらを世に送り出した企業は各サービスのバンドル化を進めている。様々なマルチメディアプラットフォームを吸収しながら巨大化していくその姿は、まるでジェンガの塔のようだ。ポッドキャスト企業を次々に買収したSpotifyは、Huluとのパートナーシップによるディスカウントディールを少し前に実施した。10月にはAppleもその流れに乗る形で、Apple MusicとApple News+、そしてApple TV+等のサービスを含むマルチティアのサブスクリプションバンドル(Apple Oneというネーミングには問題が伴ったが、本項の内容とは無関係)を開始した。一方でGoogleはYouTube TVとYouTube Musicを所有し、Disneyは増え続ける自社コンテンツ用のプラットフォームを運営している。そして猫の写真ばかりで中年向けの無害なプラットフォームに見せかけているメディア界の巨人Facebookは、あからさまにTikTokを模倣したInstagram Reelsや、音楽制作アプリFacebook Collab等の製品をローンチしている。

こういった取り組みは何を意味しているのか? 一言で言えば、スタートアップによる断片的なサービスに一喜一憂したり、「友達から教えてもらったこの新しいアプリ面白いよ」といった時代は終わったということだ。メジャーなテック企業は今やメインストリームのメディア組織であり、何もかもを保有してゆっくりと肥大化しているそれらは、エンターテインメントの世界を完全に支配しつつある。ちなみに、彼らはあなたのあらゆる個人情報を把握している。 — A.X.W.


From Rolling Stone US.

Translated by Masaaki Yoshida

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