2020年に激変した音楽ビジネス、絶対知っておくべき12の事柄

Photographs used in Illustration: Beth Garrabrandt (Swift); William Claxton(Dylan); Phone (DPA/AP Images)


6. バイラルヒットの多発

2020年にブレイクを狙ったアーティストがすべきことはただひとつ、それはバイラルヒットを出すことだった。パンデミックによって人々が対人距離の確保や自宅にとどまることを強いられるなか、発掘ツールとしてのラジオの求心力は著しく低下した。その穴を埋めたのは紛れもなく、今年のポップカルチャーの中心的存在となったTikTokだった。映像編集の自由度の高さと膨大な音楽ライブラリーを備え、誰でも簡単に使えることができたTikTokは、退屈して時間を持て余していた人々の心を掴んだ。また見計らったかのようなタイミングの良さも、同アプリの成功の一因だった。TikTokは2018年の夏に全世界で利用可能になったばかりだったが、2019年に親会社である中国のByteDanceが口パク動画アプリMusical.lyを廃止したのちにTikTokと融合させたことで、前者のユーザーの多くがそのまま流れる形になり、TikTokは爆発的な勢いでシェアを拡大した。昨年にアクティブユーザー数は約60パーセント向上(5億人から8億人に増加)し、さらに政府による圧力がその人気に拍車をかけることになった。TikTokの発表によると、2020年にはクレア・ロージンクランツやディクシー・ダメリオ、Powfu、Priscilla Block、Tai Verdes等を含む70組以上のアーティストが、同プラットフォームでのブレイクをきっかけにメージャーレーベルと契約したという。



またTikTokがきっかけで往年の名曲が再び注目されるケースが頻発したことで、同アプリはマーケティングおよびプロモーションツールとしても有力となった。RCAは売り出し中の新人テート・マクレーをTikTok上で強力にプッシュした結果、彼女は今年深夜のトークショーへの初出演やMTVのVMAノミネート、そしてポップ系ラジオ局でのブレイクを果たした。しかし真のゲームチェンジャーとなったのは、TikTokを用いたマーケティングに特化した少数の企業だ。Against the Grain (ATG)は3月だけで、様々なレーベルやアーティストから依頼されたキャンペーンを160以上実施した。テートとATGの例が示しているように、ただアカウントを持っているだけで成果が出るわけではない。TikTokを起点とした成功は、エクスクルーシブのコンテンツやメイキング映像、知恵を絞ったテーマやチャレンジ、そして何より頻繁な投稿を必要とする。— Samantha Hissong


7. 需要あるところにブランドあり

最大の収入源であるツアーが実施不可能となり、無数のメジャーアーティストが途方に暮れるなか、有り余るほどの資産を有する世界的大企業の数々は進んで手を差し伸べた。

今年本誌の取材に応じた代理店のいくつかによると、ブランドとのパートナーシップへの関心はかつてなく高まっており、契約成立のためにはこれまで以上に迅速な行動が必要だという。ブランド契約の代名詞のような存在であるトラヴィス・スコットは今年、例年以上に多くのパートナーシップを締結した。プレイステーション、ナイキ、アンハイザー・ブッシュ、フォートナイトとのパートナーシップはもちろん、大きな話題を呼んだマクドナルドとのコラボレーション「トラヴィス・スコット・ミール」は一部店舗での食料不足を招いた。さらにマクドナルドとは様々なコラボグッズも発売し、幅約90センチのマックナゲット抱き枕は即完売した。またバッド・バニーやポスト・マローンがクロックスとコラボレートし、醜いが履き心地のいいシューズを出したことや、レディー・ガガが新作『クロマティカ』の発売に際して、不可解な色の特製オレオを発売したことも話題となった。またアイスクリームメーカーSerendipityへの投資を発表したことも記憶に新しいセレーナ・ゴメスは、ブラックピンクをゲストに迎えたシングルにちなんだフレーバーのアイスクリームを発売した。2021年にはこういった動きが落ち着き、ツアービジネスが復活することを願うばかりだ。— E.M


8. メジャーレーベルを圧倒したDIYレーベルとアーティストたち

パンデミックの最中におけるDIY音楽の爆発的増加を、本誌はどこよりも早く報じた。TuneCoreやUnitedMastersを介して各プラットフォームにアップロードされた楽曲数は、2019年から飛躍的に増加した。それは世界全体のレコード業界に影響を及ぼすうねりを生み、メジャーレーベルのストリーミング市場におけるシェアの一部を奪うことになり、インディセクター全体での年間利益は20億ドル以上に達した。またMidia Researchによると、現在は音楽制作をする人の数が世界全体で約1400万人に上り、DIYシーンの影響力は今後さらに増していくという。そういった動きに、メジャーレーベルはどう反応するのだろうか? 何十年もの間、市場シェアへの執着は多額のコストを要する前線でのA&R戦略と結びつき、リリース過多の状況が毎週のように見られた。ワーナーの株式が公開され、近いうちにユニバーサルもそれに倣うことが見込まれる現在では、メジャーレーベル各社の関心は市場シェアよりも利益率へと変わりつつある。— T.I.

Translated by Masaaki Yoshida

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