2020年に激変した音楽ビジネス、絶対知っておくべき12の事柄

Photographs used in Illustration: Beth Garrabrandt (Swift); William Claxton(Dylan); Phone (DPA/AP Images)


3. 楽曲を売却するアーティストたち

ボブ・ディランが全楽曲をユニバーサル・ミュージック・グループに売却したというニュースはかつてのビートニクたちを震撼させたが、音楽業界の動向に敏感な人々にとってはそれほど衝撃的なことではなかった。2020年にはスティーヴィー・ニックス、マーク・ロンソン、イマジン・ドラゴンズ、カルヴィン・ハリス、バリー・マニロウ、RZA、ザ・キラーズ等のビッグネームが、楽曲の少なくとも一部を大企業に売却している。業界随一の貪欲さで知られるHipgnosis Songs Fundは、これまでに楽曲の買収に10億ドルをつぎ込んでおり、今後さらに大規模な投資を進めていく予定だという。ソングライターたちが楽曲の売却に積極的なのは、提示額が魅力的であるだけでなく、2020年にはツアーでの収益が見込めなかったためだ。またジョー・バイデンが大統領在任中に資本利得税の大幅な引き上げを検討していることも、その動きを加速させる要因となった。2021年の最初の数カ月においても、そういった傾向は継続すると予想されている。 — Tim Ingham

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4. 現実味を帯び始めてきた公平なレコード契約

本人の同意なしにアーティストの楽曲が売却されるというニュースは、いつ耳にしても気持ちのいいものではない。2020年にShamrock Capitalがスクーター・ブラウンからテイラー・スウィフトのレコードの原盤権を3億ドルで購入したことで、彼女は数年のうちに2度も憂き目に遭うことになった。しかし、彼女が2018年にユニバーサル・ミュージック・グループと交わした契約内容は、音楽ビジネスにおける因習打破のきっかけとなる可能性を秘めている。UMGとの契約以降、彼女は発表した全作品の原盤権を所有しており、それには昨年発表した『ラヴァー』と、今年リリースした『フォークロア』と『エヴァーモア』の2作も含まれる。ユニバーサルと傘下のリパブリック・レコーズは作品のマーケティングおよび流通のみを担当し、作品に付随する権利は保有していない。スウィフトが原盤権を巡って争い続ける中、彼女の宿敵であるカニエ・ウェストはTwitterでユニバーサルを激しく非難し、金銭面を含む自身のレコード契約における機密事項を記したページを公開した。ダムは決壊したのだろうか? メジャーレーベルのアーティストたちは今後、原盤の扱いや契約内容について交渉できるようになるのだろうか? 奮闘するウェストとスウィフトを孤立させまいと、今年は他にもいくつかのアーティストが不公平なレコード契約を批判する声を上げた。— T.I.

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5. 公平とは言い難いストリーミングビジネス

今年起きたコンサートビジネスの崩壊は、音楽業界において長年蓄積し続けている大企業に対する反感を改めて浮き彫りにした。パンデミックの最中でも、ストリーミングサービスやそのパートナーであるメジャーレーベル各社は莫大な利益を上げることができるのだろうが、そのエコシステムを健全に保つ上で不可欠な中堅以下のアーティストたちはどうなるのか? 業界団体のUnion of Musicians and Allied Workersはこれを機に、Spotifyにストリーミング報酬の引き上げをはじめとする様々な事項の見直しを求める大規模なキャンペーンを実施した。「(Spotifyが)利益を増やし続けているのに対し、音楽に携わる無数の人々はその努力に見合わない、ごくわずかなお金しか受け取っていない」。2万6千以上のアーティストが署名したマニフェストに、キャンペーンのオーガナイザーたちはそう記している。そういった動きが見られるなか、Bandcampは大手ストリーミング企業に対する有徳なプラットフォームとして存在感を示した。予め決まった日の売り上げに対する手数料が免除されるBandcamp Fridayによって、これまでに約4000万ドル(約41億円)がアーティストとレーベルに支払われた(Bandcamp Fridayは2021年もを継続される)。Apple MusicとSpotifyの両社が今年、インディペンデントのレーベルやベニューを支援する目的で多額の小切手を発行したことは、強欲な企業というイメージを改善する狙いもあっただろうが、こういったキャンペーンが功を奏し始めている兆候と言えるだろう。 — Simon Vozick-Levinson

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Translated by Masaaki Yoshida

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