聖飢魔IIの創始者「ダミアン浜田陛下」が語る、王道を貫くメタル愛

ソングライティングはまず頭の中で

―そして作曲面について感じさせられたのは、頭の中で楽曲の全体像を描きつつ、アレンジしながら作られているのではないか、ということです。ギタリストとして自分で弾きたいフレーズを盛り込んだ曲を作る、というのとは一線を画しているというか。

DH:まさに指摘の通りだ。私にとってはその行為が非常に楽しい。とはいえモーツァルトのように、いきなり頭の中で鳴って、それをすぐさま譜面に書き起こすというわけではなく、曲によってはすごく試行錯誤もあった。私は基本的に、曲をイントロから順番通りに作っていく。ただ、『旧約魔界聖書 第Ⅰ章』の3曲目に入っている “Heaven to Hell”などは、「さあ、ここから Aメロだ」という段階になった時にそれが思い浮かばず、4パターンほど作ることになった。メロディのみならずバッキングまで含めての話だ。4パターン目でようやく納得できたというのが正直なところなので、決して最初から頭の中ですべてが鳴っているわけではなく、とりあえず何かができたらその続きを頭の中で鳴らしていく、というのに近いと思われる。いわば人間たちの服装のコーディネートのようなものだ。頭の中でこのコートとシャツとズボンは絶対に合うと考えていても、実際に着て鏡を見てみると「これはちょっと違う」となることがあるだろう? それに近いと思われる。

―わかりやすい比喩でありがたいです。もうひとつ曲作りの面で明らかなのは、とにかくメロディ作りが重視されているという点です。セッションをしながら作られた曲とも、リフで押し切ろうとする曲とも違う。

DH:確かに。ただ、もちろんリフも大事だし、ヴォーカルの主旋律だけではなく、リフやギター・ソロも含めたメロディを重んじているつもりだ。ツイン・ギターを多用しているので、ソロとは呼びにくい箇所もあるわけだが。

―メロディの複合体としての楽曲、ということですね。さきほどの発言の中に「洋楽志向の人たちの耳にも響くもの」というような言葉がありましたが、そうしたクオリティを求めたいというのは、それこそ聖飢魔Ⅱを始めた当時からの指針でもあったのではありませんか?

DH:いや、おそらく当時はそんなことは考えていなかったはずだ。とにかく自分の作った曲で表現したかった。当然ながら当時はまだ自分でギターを弾いておったし、演奏者としての自分も表に出したいという気持ちがあり、楽曲のクオリティを上げたいという願望はそこまで強くなかったように思う。私はとにかくハード・ロック/ヘヴィ・メタルが大好きだったので、そうした音楽で自分を表現したい、という一心だったように思う。

―それが、こうして楽曲重視の姿勢に変わってきた経緯というのはあるのでしょうか?

DH:シンセサイザーの導入と、打ち込みでさまざまなことができるようになったのが大きいと思う。聖飢魔Ⅱの頃、たとえばデモ・テープを作る際には、ドラムだけは打ち込んで、それ以外はすべてギターで弾き、そこに自分の下手な歌を重ね(笑)、それを構成員たちに渡していた。ただ、1990年……いや、魔歴前9年あたりにシンセサイザーを購入した。あの楽器で鳴らせるギターの音はしょぼいのだが、キーボード、ドラムの音はとてもいい。その頃から徐々にはまっていったというのが実際のところだ。ただ、教職を続けていくうちに私自身の忙しさにも拍車がかかり、時には学年主任なども努めなければならなくなった。そうした多忙さゆえに作曲からも遠ざからずを得なくなった。そんな中、今から5年ほど前に久しぶりに何か作ってみようと思い立った。というのも、コンピュータの進化により作曲ソフトが飛躍的にグレード・アップしていることに気付かされたからだ。しかも実際にそうしたものを用いながら作業を始めてみると、まさに目から鱗のような体験の連続だった。当時はすでにギターを触れていない時代に入っていたんだが、そこで逆に曲作りの楽しさに改めて目覚めた、というのがある。実のところ教職に就いているだけに充分な時間はなかったが、そんな中で寝る時間を惜しみながら作ったものもある。5年ほど前に作ったアニメ『テラフォーマーズ/リベンジ』の主題歌などは、まさにそうしたものだ。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE