ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・コラボレーション・ソング

7. ヘイリー・ウィリアムス & ボーイジーニアス「Roses/Lotus/Violet/Iris」

Photo : Lindsey Byrnes*; Lera Pentelute*


ヘイリー・ウィリアムスのソロアルバム『Petals for Armor』のハイライト曲「Roses/Lotus/Violet/Iris」では、スーパーグループ、ボーイジーニアス(ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダカスの心揺さぶる音楽性が発揮されている)のコーラスがフィーチャーされている。この4人は、インディー界のサッドガール的な幻想をすべて叶えてくれる。ロックバンド・パラモアを有名にした、最高にポップでパンクなメロディーから脱皮したウィリアムスは、もっと繊細なインディー/オルタナ的表現の世界に飛び込む。だが、ボーカリストとしての強さと鋭い歌詞は健在だ。花の名前を使った言葉遊びが繰り広げられるフックに支えられた「私は庭にいる/自分自身の世話をしているの/私は気にしない/だから私が育ったとしてあなたは何を気にするの?」のように共感を誘う歌詞は、関係が終わった後の成長と進化について語っている。ボーイジーニアスのコーラスも全編にわたって響き、聴いていると心が落ち着く。それはまるで、困難な一日あるいは一年の終わりにほっとする差し入れを持ってきてくれる女友達のよう。私たちにぴったりの曲だ。R.C.



8. オーヴィル・ペック & シャナイア・トゥエイン「Legends Never Die」

Photo : Youtube


ヒョウ柄プリントとポップなフックが好きなカナダ人女性が大人の女性の絆のパワーと官能性を称える楽曲で90年代のカントリーミュージック・シーンを席巻したらどうなる? もちろん、注目を浴びる。カントリーミュージック・ラジオには過激すぎるというレーベルの重役たちの警告にもかかわらず、シャナイア・トゥエインは爆発的な人気を博し、やがてはこのジャンル屈指のベストセラー女性アーティスト、さらにはストレート女性、ストレート男性、そしてLGBTQコミュニティのアイコンとしての地位を確立した。多くの意味で、オーヴィル・ペックの「Legends Never Die」はトゥエインの物語へのオマージュである。レジェンドおよび生存者でもあるトゥエインのキャリアは、貧しく、ときには暴力をふるう家族を支えるために8歳で始めたバーでの演奏から始まった。その後、メディアを大いに賑わせた離婚と長年診断されなかったライム病によってトゥエインは二度と歌えないかもしれないと覚悟を決めたほどだった。15年間の活動休止から3年前に復帰したばかりのトゥエインが現代のカントリーミュージック界屈指のアウトロー的な新人、オーヴィル・ペックをコラボレーション相手に選んだのは誰が見ても正解で、その判断には元気づけられる。同性愛者であることを公言し、「ラインストーンをあしらったカウボーイとパンクロックの反逆者の融合」を自称するペックは、クラシックなカントリーミュージックの構造とエモーショナルな鼻声なまりの歌声とローファイなサウンドをいとも簡単に融合させている。「Legends Never Die」は現時点でペックの最大のヒット曲であり、彼が本物のアーティストであることを裏付けたが、トゥエインが加わったことでより奥深い内容の歌詞になった。偉大なるふたりの“負け犬たち”はクールな自信とともに輝きを放ち、いまも進化している音楽シーンを見事に反映している。S.H.



9. バッド・バニー & ロザリア「Noche de Anoche」

Photo : Vevo


多くの人にとって2020年はまるでアルマゲドンのようだった。バッド・バニーが感謝祭の日にリリースしたアルバム『El Último Tour del Mundo(英訳:The Last Tour of the World)』は、世界の終わりに意気揚々と出かけていくエキセントリックなスピリットを奮い起こすような作品だ。プエルトリコ/ドミニコ共和国系の人気プロデューサーMAGが手がけた全編スペイン語歌詞の同アルバムは、音楽チャートBillboard 200で初登場1位を獲得し、64年にわたるオールジャンルの音楽チャート史初の快挙を成し遂げた。ラテンのトラップ、ポストパンク、レゲトン、ロックの実験的作品でありながらも、コラボ曲「Noche de Anoche」には、吐息まじりに愛と欲望について歌うロザリアのロマンチックなやわらかさが加わっている。「こんなことは二度と起きないってわかってる/でももし起きたら/次はあなたの弱点を知っている」とロザリアはスペイン語で歌う。それに対し、バッド・バニーは同等の欲望とうねるようなグルーヴに乗りながらロックダウン下のロザリアの夢想に応える。ふたりは、世界の終わりの極上のロマンスを描き出した。I.R.



10. フォー・テット & エリー・ゴールディング「Baby」

Photo : Burak Cingi/Redferns/Getty Images; Joel C Ryan/Invision/AP

シンガーソングライターのエリー・ゴールディングとフォー・テットの「Baby」にいったいどんな関係があるのか? とあなたが思ったとしても、それは仕方ない。フォー・テットのソロ10作目となるスタジオ・アルバム『Sixteen Oceans』に収録されているいくつかのアンビエントなハウスチューンのひとつである「Baby」で「だって私にはあなたしかいないの/私を連れて行って」と歌うゴールディングの声は細かく刻まれていて、実際、彼女だと聴き分けることはほぼ不可能なのだから。断片となったゴール・:「』|〜¥ディングの声は静かなシンセサイザーの調べと重なり、不安定ながらも快活なグルーヴを生み出している。最初は意外な組み合わせだと思うかもしれないが、一度聴けば、完璧な嵐のような作品に仕上がっていることがわかる。E.B.



Translated by Shoko Natori / Written by EMILY BLAKE & ROSALIE CABISON & TIM CHAN & JON DOLAN & JON FREEMAN & DEWAYNE GAGE & SAMANTHA HISSONG & ETHAN MILLMAN & ISABELA RAYGOZA & BRITTANY SPANOS

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