新型コロナウイルスによって「ライブ音楽」は死んでしまうのか?

進展の指標として観察すべきマーケットはオーストラリアだ。アメリカと比べれば規模は小さいがツアー市場としては重要な国である。彼の国はパンデミックへの対策として市民にかなり厳しい制限を強要したが、その結果、現在の国内の状況は非常に好転しており、当然ながら現状を維持するためにアメリカ、イギリス、ヨーロッパへの国境開放には非常に慎重になっている。

そういった国々を移動してのツアーの実現や、規制や隔離を緩和して、ツアーを行う地域で現地クルーを雇用できるようになるまで、この問題が解決したと断言できない。

これを念頭に置いて考えた場合、会場のキャンペーン、自宅待機、ファンドレイジング、フリーランスのためのキャンペーンなど、これまで私たちが行ってきた数々のハードワークが、この苦しい時期を生き延びるために本当に正しかったと納得するにはどうしたらいいのだろう。

現実的には、全世界が規制のない移動を再開するまで、どのような方法であれ、我々がよく知る“ツアー”というものはまったくもって実現不可能だ。その結果、多数のフリーランス、会場、その他の関連インフラが、ツアーという商業エコシステムからの恩恵に与れない。

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現在、何よりも私たちに必要なのは、世界規模の明敏なリーダーシップだ。これに到達するには、業界として、さらに世界的コミュニティとして、私たち全員が協力体制を強化しなくてはいけない。この問題が我々全員に悪影響を与える由々しき問題だと、私たちは強制的にでも自国のリーダーに理解させなくてはならないし、安全を保ちつつも国境を開放する実利的な方法を探り出させなくてはならない。

感染症という既存の問題が解決しないままで、新たに問題を増やしたい人などいない。しかし、ワクチン接種が現実となった今、頭上を覆っていた暗雲を蹴散らす準備ができたのだから、勇気を奮い起こして、相互依存関係にある世界経済の再スタートの方法を前向きに模索すべきだ。

それも世界経済の中で生きている私たち全員が手を携え合って。


この論説の初出はMusic Business Worldwide。ライブ音楽ビジネス界でのオリアーの実績には、史上最高額の収益(チケット販売だけで7億7600万ドル)で記録を更新したエド・シーランのDivideツアーのブッキングが含まれる。近頃オリアーは自分の顧客アーティストを引き連れてCAAから独立し、ロンドン拠点のOne Flinix Liveを設立した。

From Rolling Stone US.

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