ヒット曲はどのように生まれた? Spotifyと振り返る2020年の音楽シーン

Photo by Helene Pambrun (Harry Stiles), ACMA2020/Getty Images for ACM (Taylor Swift)


新鋭によるバイラルヒットが続出

―「海外で最も再生された国内アーティスト・楽曲」のランキングが興味深かったです。共にLiSAが1位を獲得していますが、この並びについてはどう捉えていますか?

芦澤:LiSAはこれまでも聴かれていたのですが、今年1位になったのは『鬼滅の刃』効果ですね。「紅蓮華」は総ストリーム回数が1億回を突破しました。LiSAの強みは日本と海外の両方で、非常によいバランスで聞かれていること。香港や台湾で『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が先行公開されたことで、海外のデイリーチャートで1位を獲ったこともありました。2021年はさらに海外でも公開されるでしょうから、どこまでいくのか非常に楽しみです。

アニメ関連の楽曲が海外で多く聴かれるのは数年前からの傾向で、今年はさらに強まっています。このリストに入っているアーティストの多くが、何らかの形でアニメと接点を持っていますから。5位の久石譲は以前から国外で聴かれていましたが、今年はスタジオジブリの映画音楽カタログの配信が始まったので、より聴かれるようにました。


「海外で最も再生された国内アーティスト」2位のRADWIMPSは映画『君の名は。』『天気の子』の主題歌が人気。6位の林ゆうきは『僕のヒーローアカデミア』『ハイキュー!!』などアニメ楽曲で知られ、アメリカでの再生回数は日本の約5倍。「最も再生された楽曲」では、2位が『東京喰種トーキョーグール』のOPテーマ、3位と4位は『NARUTO -ナルト-』関連など、アニメ関連楽曲がトップ10のうち8曲を占めている。



―「国内でSpotifyからInstagram Storiesに最もシェアされた楽曲」では、1位の瑛人「香水」に納得しつつ、2位にVaundy「東京フラッシュ」、3位に藤井 風「何なんw」と、これまたSpotifyが「Early Noise」でプッシュしてきた2人がランクイン。彼らの活躍はどのように見ていますか?

芦澤:Vaundyは楽曲のタイプがどれも違っていて、引き出しの多さ、インターネットカルチャーの中で音楽を聞いてきたハイブリッド感が面白い。まだ現役大学生で、伸びしろもすごくありますし。彼はコンスタントに作品をリリースしていて、リリースを積み重ねていくごとに再生回数が伸びていきました。夏にSpotify PremiumのキャンペーンCMで「不可幸力」を起用し、それ以降の伸びもまた凄かった。今ではマンスリーリスナー数が140万人を超えています。

また、ラウヴのリミックスをやったり、Nulbarichとコラボレーションしたり、さらにその曲をヨルシカのn-bunaがリミックスしたりと、コラボやフィーチャリングのやり方が上手だと思います。彼自身の音楽性が多彩なので、面白いコラボレーションができるのでしょうね。ストリーミングにおいては、フィーチャリングで参加しているアーティストのファンにリーチできるので、それまで知らなかった人に音楽を届けられる利点があります。Vaundyは、そういった方法も活用しながらリスナー層を広げているとも言えます。



芦澤:藤井 風は非常に才能に溢れたアーティストだと思います。本来であればVaundyと共に今年3月の「Early Noise Night」に出演していただく予定でしたが、コロナ感染拡大の影響を受けて中止になってしまったのが非常に残念です。

―「Early Noise Night」は恵比寿リキッドルームで開催される予定でしたが、藤井 風は10月に日本武道館での単独公演を成功させています。とてつもない勢いでした。

芦澤:Spotifyでも作品がリリースされるたび圧倒的に聴かれていて、「作品力」の強さを感じます。それと、若いアーティストですがリスナーの年齢層が幅広く、エルダー層まで取り込んでいます。5月にアルバム『HELP EVER HEART NEVER』がリリースされた時、収録曲がまんべんなく聴かれていたことも印象的です。このランキングには「何なんw」が入っていますが、「優しさ」や「もうええわ」などはもちろん、他のアルバム収録曲も非常によく聴かれていますね。



―「国内バイラルチャート」についてはどうでしょう? Spotify上から様々なSNSでシェア・再生された回数などのデータを元に、「いまSNSで最も話題になっている曲」をSpotifyが独自に指標化したもの、とのことですが。

芦澤:バイラルチャートに入っている楽曲は、シェアされた先でまた聴かれることがポイントで、「語りたくなる曲」「誰かに伝えたくなる曲」が上位に入ってきます。

3位のDISH//「猫」、4位の優里「かくれんぼ」、7位のオレンジスパイニクラブ「キンモクセイ」、9位の神はサイコロを振らない「夜永唄」あたりは、「TikTokからバイラルへ」という流れが透けて見える楽曲です。DISH//「猫」は(原曲とTHE FIRST TAKE版の)2バージョンが両方ともトップ5に入るほど聴かれているのも面白く、今年を代表する一曲と言っていいでしょうね。

あと、12位のyama「春を告げる」は、YOASOBI「夜に駆ける」に近い感覚で聴かれている印象です。13位のNovelbrightも「Early Noise」アーティストで、ずっと応援している一組です。

それと今年はステイホームの影響もあり、TikTokをきっかけにバズを生んだ曲の中でも、「踊ってみた」系の流れに加え、ゆったりとした曲やエモい曲、メッセージを伝えられる曲も流行るようになりました。19位のもさを。「ぎゅっと。」や、過去の楽曲がTikTokから再注目された20位の川崎鷹也「魔法の絨毯」(2018年)は、正にそういう楽曲ではないかと。




Text by Ryutaro Amano

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