ヒット曲はどのように生まれた? Spotifyと振り返る2020年の音楽シーン

Photo by Helene Pambrun (Harry Stiles), ACMA2020/Getty Images for ACM (Taylor Swift)


ラテンとK-POPが躍進、海外ランキングを見る

―では、グローバルランキングから見ていきましょう。「世界で最も再生されたアーティスト」1位は、83億回以上の再生を記録したプエルトリコのバッド・バニー。3位はコロンビアのJ・バルヴィンで、アヌエル・AAとオスナ、ダディ・ヤンキーもランクインと、ラテン系アーティストの躍進が目立ちますね。

芦澤:おっしゃるとおり、世界規模ではラテンカルチャーの勢いがすごいことを改めて実感しました。ラテン音楽が、ラテン系移民の多いアメリカはもちろん、アジアや中東、ヨーロッパにも広がっているのだなと。Spotifyのグローバルトップアーティスト年間1位を、北米以外のアーティストが獲ったのは史上初です。バッド・バニーは歴史を変えたことになりますね。

―ここ数年はドレイクの特等席みたいになっていたので本当に快挙ですよね。さらに、6位はBTS。ラテンに韓国と、ポップミュージックの世界でグローバル化が加速していると言えそうですね。

芦澤:まさにラテンとK-POP、その2つのカルチャーがグローバル規模で市民権を得ました。ただラテンに関しては、日本ではあまり実感が湧かないのが正直なところです。バッド・バニーなどのアーティストの一般的な認知や人気も日本ではまだまだですよね。

K-POPは日本を含めて、世界中でメインストリームな音楽シーンを席巻しているように感じています。そもそもSpotifyは、韓国ではまだサービスが始まっていません(編注:12月21日、2021年上半期に韓国でサービス開始と報道)。その状況で6位というのは、すべて韓国以外での再生ということを意味するので、物凄いことだと思います。今年は『The Album』をリリースしたBLACKPINKも勢いがありました。




「世界で最も再生されたアーティスト」プレイリスト(50位まで収録:以下同)


「最も再生されたK-POP楽曲」のプレイリスト。50位までにBTSが25曲、BLACKPINKが10曲ランクイン。

―「世界で最も再生された楽曲」に目を向けると、ロディ・リッチ「The Box」などTikTokから人気に火が付いた楽曲が並んでいますね。

芦澤:Spotifyで常に聴かれていた曲が上位に入っているので、順当な印象です。1位のザ・ウィークエンド「Blinding Lights」は、やはり今年を象徴する楽曲のひとつだと思います。





―「世界で最も再生されたアルバム」では、こちらもバッド・バニーの『YHLQMDLG』が1位。昨年3月にリリースされたビリー・アイリッシュの『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』が7位に入っています。

芦澤:必ずしも2020年の新譜ばかりがチャートインするのではなく、過去作が聴かれ続けるロングテール現象も、ストリーミングならではだと思います。

―実際、ビリーは「世界で最も再生された女性アーティスト」のランキングでも、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデ、デュア・リパといった今年の顔を押さえて1位に輝いています。

芦澤:彼女は「現象化」していますね。ビリーの音楽は、過去に人気だった明るくポップな音楽とは対極的で非常にダークなものですが、ティーンエイジャーたちから熱狂的に受け入れられている。歌詞の世界、メッセージ、音楽のみならずビジュアルやアートワークなど、表現全般においてアイコン化していると感じます。彼女自身とお兄さんのフィネアスとで作り上げるベッドルームポップ的な世界や、DIYミュージシャン的なあり方も現代的です。





―ジャンル別でいうと、やはりヒップホップが相変わらず人気ですか?

芦澤:圧倒的に強いですね。これも日本ではそこまで実感が湧きませんが。「世界で最も再生されたアルバム」8位のジュース・ワールド『Legends Never Die』は象徴的です。今年亡くなったミュージシャンの作品がチャートを席巻しました。

―6位の『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』も、ポップ・スモークが亡くなった後に発表されたアルバムですね。ロックはどうでしょう?

芦澤:少しずつ人気が戻ってきている印象です。(全米アルバムチャート1位を獲得した)マシン・ガン・ケリーのような、オルタナティブロックとヒップホップを融合させたアーティストが新しく出てきたことが面白い現象だと思います。

ジャンルの垣根を超えて聴かれること、ジャンルがハイブリッド化していくこともストリーミングの特徴でしょうね。ジャンル分けされたプレイリストももちろん存在しますが、「New Music Friday」のような新譜プレイリスト、さらにはムードやシチュエーションなどテーマごとに作成されたエディトリアル・プレイリストの多くは、色々なジャンルの楽曲が混在する。ストリーミングやプレイリストの普及によって、リスナー側も「これはロック、これはヒップホップ」と聴き分けるのではなくて、もっと感覚的に受け入れているのだと思います。だから、ハイブリッド化が様々なジャンルで起こっている。異業種、異分野間のコラボレーションが話題を呼ぶケースも多いので、ジャンルを超えたアーティストやクリエイターの協業やフィーチャリングも増えているように思います。


「New Music Fridays」は世界統一のアルバムリリース日=毎週金曜日(日本は除く)に、注目の新作をピックアップするプレイリスト。日本版も存在する。

Text by Ryutaro Amano

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