『マンダロリアン』シーズン2、感動的な終幕の振り返りと考察

最終話「救出」がもっとも力強い効果を発揮しているのは、ルークの正体が明かされるときではなく、別離の瞬間だ。『マンダロリアン』の主人公ではないため、短い間だけでもルークが同シリーズに登場するのはわくわくする。ルークの物語は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)で見事な終幕を迎えたのだ。ここでのルークは、ダークトルーパーから味方を救出する、グローグーを守り、訓練する、そして少なくとも一時的にマンドーと息子のような存在のグローグーを引き離すという複数のエンディングの手段なのだ。だが『マンダロリアン』は、孤児だったところを“ウォッチ”というカルト教団に救われ、厳しい戒律のもとで育てられたディン・ジャリン(マンドーの本名)という男の物語であり、彼は別の孤児を救い、その孤児のことを大切に想うようになった結果、彼のすべてだった社会の掟よりも孤児との絆を選ぶ。グローグーがマンドーのヘルメットに触れると、マンドーはヘルメットを脱ぐ。シーズン1の最終話、または最終話以前のエピソードのように必要に駆られてそうしたのではない。彼は、グローグーに自分の顔を見てほしかったのだ。保護者の正体を知り、その顔に触れてほしかった——それが一瞬だとしても。マンドーのミッションは、ずっと前から仕事でもなければ、アーマラーに命じられた冒険ではなくなっていた。これは愛の物語であり、俳優ペドロ・パスカルが声だけでの演技(*)を強いられるなか、同シリーズが2シーズンにわたって経験してきたありとあらゆる障害を十分正当化できる美しさがある。


グローグーとルーク・スカイウォーカーの出会いの場面 (Photo by Screengrab/Lucasfilm LTD.)

(*) 効果は若干弱まっているものの、「エピソード7:信奉者」の構想上ペドロ・パスカルのヘルメットを脱がすという選択は、エピソードとエピソードの合間でマンドーがヒゲの手入れをしたからではない。ヘルメットを脱ぐシーンは印象的だったものの、最終話までこれを温存していれば、どれほど効果的だったことか。

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ボバ・フェットとフェネック・シャンドがかつてのジャバ・ザ・ハットの玉座を奪うポストクレジットのシーンはさておき、マンドーとグローグーの別れは、シーズン3の可能性を比較的多く残している。グローグーの可愛さはもちろん、若きルークを使用する上での同作の明確な限界も去ることながら、彼らがずっと離れ離れでいることは想像し難い。だが、現時点では、ダークセーバーの持ち主となったマンドーは、守るべき“幼な子”を失った。いまとなってはマンダロア奪還を掲げるボ=カタンの計画に加わることもできるし、事実上の支配をボ=カタンに任せて名目上の支配者を演じることもできる。いますぐにボ=カタンと対決することもできる。あるいは、別の賞金稼ぎのミッションを求めてこの場から走り去る、あるいは盗まれたグローグーの血(あるいは血を注入された被験者、またはその両方)を見つけるためにキャラと手を組むことも可能だ。その点では、ボバとフェネックのスピンオフ作品『The Book of Boba Fett(原題)』は、マンドーとボバは味方から敵同志になるシーズン3の副題とも言えるだろう(現時点で米ディズニーは、スピンオフ作品のタイトルが何を意味するかをまだ明かしていない)。

素晴らしいデビューイヤーからあらゆる方法でレベルアップを遂げた『マンダロリアン』の最終話は、スリリングで最終的には涙を誘う終幕となった。ギデオンがマンドーとボ=カターンに決闘が避けられないと説く一方、ギデオンはダークセーバーではなく、この物語自体に本当の力があることを教えてくれる。『マンダロリアン』は物語が持つパワーの大切さを理解している作品だ。そしてこれは、少しでも『スター・ウォーズ』のことを気にかけているすべての人の幼心に訴える方法でもある。


その他の考察:
* 現時点でファヴローとフィローは取材を拒否しており、最終話がすべてを語るがままにしている。

* ポストクレジットのシーンは、いくつかの疑問を投げかける。『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』以降、ビブ・フォーチュナが存在感を増したのは、ジャバの玉座と何らかの関係があるのだろうか(そうだとしたら、ボバも負けてはいられない)? いまは亡きボスに変わって犯罪帝国を支配する一方、ビブは玉座の下に追いやられるほどの憎しみを買ったのだろうか? ゲートに立つボバとフェネックは無事だったのだろうか? ボバがシーズン3のスピンオフ作品の主演であるかどうかはさておき、コブ・ヴァンスとの対決は来年こそ見られないものだろうか?

* 同作は、『スター・ウォーズ』というなじみ深い作品を新しくて恐ろしいもの(TIEファイターへのズームインなど)に再構築した。その一方、盗まれた帝国軍の宇宙船がチューブを移動する場面は、同じような宇宙船がデス・スターに着陸するときよりも危険な気がする(すでに恐ろしげなダークトルーパーに極度にズームインすることで、もっと大きな危険がマンドーと仲間たちの身に迫っている印象を与える)。

* そして最後に、ルーク・スカイウォーカーに関するネタバレがソーシャルメディアにあふれたことは、同シリーズの最終話を米太平洋時間の真夜中にリリースする難しさを改めて提示した。Disney+はNetflixのやり方を踏襲しているだけだが(Netflixは、エピソードのほとんどが配信されるタイミングとしてこの時間を導入)毎週新たなエピソードを配信する番組とフルシーズンのリリースとではわけがちがう。それに、『マンダロリアン』は世界中に配信されているため、ネタバレから人々を守る最適な時間というものは、本当は存在しないのだ。だが、Disney+やその他の動画配信サービスが、たとえば、今季は東部標準時間の午後9時に配信しますと宣言したらどうなるだろう。まったくあり得ない話ではないと思うのだが。



Translated by Shoko Natori

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