NYの救急救命士「私が生活費のためにヌード写真を公開した理由」

渦中のローレン・クウェイにインタビュー

ーまず、救命士になったいきさつを教えてください。

昔からずっとブロードウェイの舞台に立つのが夢でした。ずっとチーターガールズになりたいと思っていました。歌って踊って演技して、というのが夢だったんです。それでニューヨークシティに行って、アメリカン・ミュージカル&ドラマ・アカデミーに2年間通いました。ミュージカル舞台のプログラムを修了して、2017年からオーディションを受け始めたんですが、自分には向いてないと思いました。求められることが高いわりには、見返りが少ないんです。早朝4時に起きて、見た目も声も自分そっくりの600人の子たちと一緒にオーディションを受けるんですよ。出番はたった20秒。後日連絡します、と言われるけれど、絶対連絡は来ません。そのくせ、オーディションにかかった時間の分のお給料は出ないし、運よく役をもらえたとしてもせいぜい1週間の夕食代ぐらいしかもらえない。コネがすべて、愛想よくふるまうことがすべてなんです。私はそういうのには向いてないなと実感しました。でも何より大事なのは、自分が社会に十分還元できてないと思ったこと。父も母も医療従事者です。医療関係の家に育ったので、私にとっても自然の流れでした。2017年に救急医療技師の学校に入って、2018年には救急医療技師として実習を始めました。1年間はすごく楽しかったです。でも救命士のほうが給料もいいし、もっとすごい仕事ができるという話をを聞いて、救命士の学校に行くことにしました。

ー2020年2月に卒業して、いきなり救命士の仕事に就きましたね。パンデミック真っ只中のニューヨーク市で救命士としての仕事内容について、意外と知られていないことはどんな点ですか?

そうですね、救急医療の現場ではメンタルヘルスのことはあまり話題に上りませんね。蔑ろにされているわけではなく、なんとなく話題にしないという感じです。今年は3人、少なくとも3人、ニューヨーク市の救急医療スタッフが自殺していて、おそらくパンデミックの影響だと考えられています。1人は救急技師になりたての24歳の人で、消防署に勤務していましたが、働いて2~3カ月後には銃で自殺してしまいました。彼はいわゆる手も足も出ないと感じるところまで行ってしまって、必要な助けが得られず、結局死んでしまった。私たちも知らないだけで、そういう話はたくさんあります。救命士は常に死や悲しみを目にしていますから。私たちに求められているのは、次の現場に向かって仕事をして、週に30〜40時間働くことだけ。毎日同じことを繰り返し、1日に数人の患者が目の前で亡くなることもあります。とにかく気持ちを切り替えて、仕事を続けることが求められていました。

Translated by Akiko Kato

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