THE ORAL CIGARETTES鈴木重伸が語る、バンドのリーダーとしての軌跡

「それこそ当初はイントロのフックを任されている意識でしたけど、今は自分のフレーズを押し出すことだけが重要ではないと思うようになりました。逆に言えば、『このフレーズが俺の武器だ』って自覚すると、何も武器がないと思っていた時期が長かったからこそ意固地になったりもしてたんですよ。『いやいや、アドバイスなんか聞かないよ』って。でも今は、バンド4人で楽曲のベストの形にたどり着くことを考えるのが楽しいと思える。アドバイスもありがたいと思えるし、自分からいろんな音楽を聴いて素直に吸収できるんです。それが自分の変化だと思いますし、オーラルを続けてきたからこそお互いを理解できて、尊敬し合えるようになったことの表れだと思うんですよ」

バンドとは、ただ複数人が音楽を共に鳴らす型のことではない。人と人がお互いを信頼し、時には頼り合い、自分自身の至らなさを埋めてくれたり時には叱ってくれたりする人間同士の絆の名前が「バンド」なのだとあらためて実感する。何より自分自身を信じられていなかった過去を告白してくれた鈴木にとって、「追いつくべき存在」だったメンバーが「仲間」だと実感できた瞬間は何にも代え難い喜びと幸せだっただろう。落ち着いた口調を崩さないまま、しかし心底今が一番楽しいという実感が表情から感じ取れる。タバコを美味そうに吸いながら、彼はさらにこう続ける。

「自分を縛っているのは自分だったと気づいてきた道のりだった気もするんです。メンバーそれぞれと時間を共にしてきたことで、誰も僕を下になんて見ていなかったと気づいた。ちゃんと信頼してくれていたんだなって……誰かに比べて自分はダメだって言い訳をして、そのくせ周りに文句ばっかり言ってるヤツだったんですよ、僕は。だけど今は堂々とライブができているし、『こいつらと一緒にライブができることが楽しい』って素直に思える。その楽しみを守り続けることが、唯一のこだわりなんです。今僕が持っているものはすべてオーラルがもたらしてくれたから。他のメンバーにとっても、このバンドが『いつでも帰ってこられる場所』になるように。その環境を守り続けることがリーダーとしての役割だと思ってるんですよね。何があってもこのバンドだけは続けて行きたいんです。4月にリリースするアルバムも、純粋に『この曲をライブでやるのが楽しみだ』っていう気持ちで作れたので。楽しみにしていてほしいですね」

メジャーデビュー5周年を飾る野外主催イベント『PARASITE DEJAVU』を同年代のバンドたちに囲まれて成功させられたこと。過去最大規模のアリーナツアーを重圧としてではなく「この4人で鳴らせることが楽しい」という感覚で素直に楽しめたこと。それらも、自分で自分自身を信じ、仲間を疑うことなく真正面からぶつかっていくための自信に繋がったのだという。「人に合わせるんじゃなく、自分の価値観に胸を張れば楽しいことがたくさん見えてくる。それを伝えたいんです」とまっすぐな目で伝えてくれた鈴木。その「信頼」の地平に立った今だからこそ思うオーラルの面白さとは、彼にとってどういうものなのか。

Photo = Mitsuru Nishimura

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