ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・ムービー20選

ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・ムービー20選(David Lee/HBO; Amazon Studios; Searchlight Films; Kerry Brown/HBO; Amazon Studios)

米ローリングストーン誌が2020年の年間ベスト・ムービーTOP20を発表。昔日のハリウッドを称えるモノクロ映画からレゲエ一色の作品、さらにはルーマニアのドキュメンタリーまで、2020年の最高傑作を紹介。

2020年は、私たちが思っていたような1年ではなかった。豊作のサンダンス映画祭、『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞という歴史的快挙、2019年に世界各国の映画祭で話題になった数々の良作の一般公開など、2020年はこうしたハイライトとともに幕を開けた。映画館はスマホでメールを送ったり、おしゃべりをしたりする迷惑な人たちであふれていたが、営業はしていた。ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド卒業作、クリストファー・ノーラン監督が放つ最新の難解IMAXスリラー、ウェス・アンダーソン監督による昔日のジャーナリストたちへのオマージュ、ビートルズの「Let it Be」のレコーディング模様を描いたピーター・ジャクソン監督によるドキュメンタリーなどを心待ちに、私たちはマーベルの新作、公開延期になった『トップガン』の続編、『ゴーストバスターズ』の続編3作目の公開を期待(と不安)とともに待っていたし、春のカンヌ国際映画祭の受賞作と、それに続くベネチア、テルライド、そして秋のトロント映画祭のラインナップは何かと予想を立てた。ケリー・ライヒャルト監督の『ファースト・カウ』に出演した牛のイヴは、最優秀助演女優賞候補と見なされるべきなのか? それとも、最優秀主演女優賞的な賞のほうがふさわしいのか? と私たちは議論を交わした。

そして2月末から3月初頭にかけて、まるでさまざまなノイズが入り混じったサウンドトラックに埋もれるかのように、ウイルス性感染症がアジア、ヨーロッパ、そしていまやアメリカでも危険なスピードで拡大していると報じるニュースキャスターのかすかな声が聞こえてきた……

この続きは、誰もが知るところだ。映画の公開は、終わらない椅子取りゲームのように次々と延期になり、シネコンのような公共空間は犯罪現場のように見なされ、映画とテレビ番組の製作は一時停止し、劇場の大きなスクリーンで公開を予定していた映画スタジオは、家庭のテレビへと公開の場を切り替えた。劇場体験の救世主と期待されたノーラン監督の『TENET テネット』は、結果的には大ヒットしたものの、アメリカ人たちがステイホームを続けるなか、テーラードスーツに身を包んだ男たちが爆発から逃れようとする姿を描いた、空間と時間がテーマの難解なスリラー作品が空っぽの劇場で上映されたからといって、これが本当の意味での“劇場公開”と言えるのだろうか? いくつかの映画は、公開が夏に延期され、それが夏の終わり、さらには初冬、そしてとうとう2021年まで延び、世界がロックダウンへと向かうにつれて、人々は“公開日未定”の映画のことなど気にかけなくなった。それでも、映画館での映画鑑賞を愛する人たちや、館内の照明が落ちはじめるときの気分を無性に恋しく感じる人たちにとっては、行きつけの映画館がずっと閉まったままであるという状態は、2020年がもたらしたもうひとつの犠牲でもある。

>>関連記事:社会現象級の大ヒット、ノーラン監督の超大作『TENET テネット』に世界が熱狂する理由

だからといって、2020年には優れた映画はなかったというのはまったくの間違いだ。実際、幸運にも私たちが観ることができた映画の中には、良作がたくさんあった。結果として私たちは、こうした映画をバーチャル映画館やVOD(動画配信サービス)、そしてもちろん、遍在的なストリーミングサービスを介して視聴したのだ。映画は存在していた——作品の中には、昨年の公開からずれ込んだもの、ロックダウン前に製作を終えたもの、極めて困難な状況下でも完成にこぎつけたものなどさまざまだったが。前向きなライブ映画からダンスパーティによる魂の救済を描いた作品、ルーマニアのドキュメンタリーから南米グアテマラの幽霊物語、さらには昔日のハリウッドを振り返るモノクロ映画や、鮮明な色彩が特徴的な、植民地主義に対する扇動的な復讐劇にいたるまで、2020年のベスト・ムービー・トップ20を紹介する。

>>2020年ベスト・ムービーランキングリスト一覧を読む

Translated by Shoko Natori

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