コロナ予防接種「絶対に受けない」と回答、米国人女性が反ワクチン感情を持つ理由

Photo by David McNew/Getty Images

新型コロナウイルスのワクチン接種がロシアで開始されるなど、アメリカでも実用化に向けた動きが進んでいる。だが保健衛生の研究者は、ワクチンを接種したがらない一部のアメリカ人が一般大衆に危険をもたらすのではという懸念をいまだ拭えずにいる。先週発表された2つの調査結果によると、こうした不安は的を得ているようだ。

ナショナルジオグラフィック誌が2201人のアメリカ人を対象に行ったアンケートによると、男性の69%はコロナワクチンを接種すると回答したのに対し、女性は51%だった。実にアンケートに答えた女性の1/4が「絶対に」ワクチンを接種しないと回答している。この結果はPew社の調査結果とも一致している。こちらの調査では、ワクチンを「おそらく接種しない」または「絶対に摂取しない」と答えた女性は45%にのぼる。対する男性は33%だ。

いずれの調査もワクチン否定派の人口動態の内訳についてはくわしく触れていないが、Pew社の調査は少しばかり全体像を描いている。アンケート全体を通して、「COVID-19に感染して重症化するかもしれないという個々の懸念は、他の人種や民族よりも白人成人の間で低い」とアンケートはまとめている。また、低所得者よりも中流~上流階級の間で低かったそうだ。

一見すると、ワクチン拒否が女性に偏っているのはいささか驚きだ。過去のデータでは、女性の方が男性よりもマスク着用といったCOVID-19予防対策に積極的であることがわかっているからだ。だが偽情報を取材する記者ベン・コリンズ氏もTwitterで指摘しているように、男女の格差はソーシャルメディア上で広く蔓延している反ワクチン感情とも一致している。これまでの流れでは、こうした感情を支持しているのは主に裕福な白人女性だ。

反ワクチンドキュメンタリー『Plandemic』がFacebookで爆発的人気を誇ったことや、Qアノンに端を発する反児童売買運動#SaveTheChildrenの拡散なども相まって、女性はインターネット上で次第に過激化しつつある。

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こうした傾向はとくに母親の場合に当てはまる。『The World’s Worst Conspiracies(原題)』の著者マイク・ロスチャイルド氏は、以前ローリングストーン誌にこう語った。「大勢のお母さん方が、子供に何かあったらどうしよう、自分の子供はパンデミックに対抗できないんじゃないか、とやきもきしています。こうしたお母さん方は過剰に心配し、インターネットに依存して、多くの時間を持て余しています」。こうした陰謀論は、広範囲かつ女性主体のコミュニティ、たとえばヨガや健康志向のInstagramなどに徐々に浸透し始めている。

また研究者は、インターネットをねぐらにする多くの陰謀論が世間に溶け込む様子を目の当たりにしている。作家のアナ・マーラン氏はこれを「陰謀のシンギュラリティ」と呼んでいる。Qアノンや反ワクチン運動が次第に世間に歩み寄り始め、その結果多くの女性たちがそれまで無縁だった陰謀論というウサギの穴に深く落ちているのだ。

「こうしたコミュニティ同士が近づくと、次第に交配作用が起こります」。Digital Forensic Labのアシスタント調査エディター、ザリーン・カザリン氏は、以前ローリングストーン誌にこう語った。「これまでは、8chanにはまっている人たちやネット住民だけが執着するエセ陰謀論と思われていましたが、実際はもっと広い層に訴求し始めています。これはちょっと危険ですね――郊外の子煩悩な母親を虜にするようなものになりかねません」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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