ダーティ・ループスと亀田誠治が語る、「誰とも似ていない音楽」を作り出すための信念

 
楽器に向き合うからこそ見えてくる音楽の本質と自分との対話

―ダーティ・ループスの3人はとにかく超絶テクニックと、アカデミックな知識の持ち主です。「テクニックと知識」があることの強みとは、率直に言ってなんだと思いますか?

ヘンリック:面白い質問ですね(笑)。僕らの作る音楽は、コンピューターだけでは絶対にできない、コピー&ペーストやドラッグ&ドロップだけでは絶対に成立しないものではあるのですが、実は曲作りの段階ではコンピューターとインタラクト(相互作用)しているというか。そういう意味では、両方の良い部分を取り込んでいるところが強みだといえますね。ただ『Phoenix』は、前作に比べるとよりオーガニックなフィーリングを大切にしています。EDM的な要素は、だいぶ後退したと思いますね。


ヘンリック・リンダー(Ba)

―オーガニックなアンサンブルと、コンピューターとのインタラクト、両方のバランスによってダーティ・ループスのオリジナリティが作り出されているのかもしれないですね。

ヘンリック:まさにそうだと思います。友人にホーンやパーカッションを演奏してもらい、それをオーバーダビングすることもあれば、コンピューターの中の音源をバンドアンサンブルとミックスすることもあって。そういう、テクノロジーを使ったエディットとバンドのオーガニックなグルーヴのミックスがダーティ・ループスらしさに繋がっているのだと思います。



―亀田さんにお聞きしたいのですが、「テクニックと知識」を兼ね備えた彼らの楽曲を聴くうえで、リスナーがより楽しむためのポイントはどこにあると思いますか?

亀田:確かに彼らはテクニックも知識も兼ね備えているんですけど、曲を聴く上でそこは全く関係ないと思っていて。とにかく、音と楽器でどれだけ遊べるか、どれだけ楽しめるかということを、無邪気に表現しているのがダーティ・ループスだと思うんです。

テクニックというと、ただひたすら楽器と向き合っているとイメージする方も多いかもしれないのですが、僕の持論でいうとそれは違うと思うんです。楽器に向き合う時間が長いぶん、音楽の本質や自分と向き合う時間が増えるんですよ。そうすると、人間としてもImproveしていくと思っていて。僕は、ダーティ・ループスからは、そこを極めていく若者たちのエネルギーを感じるんです。音楽を好きな人が聴けば、彼らの音楽は元気を与えてくれると思いますね。

ヘンリック:確かに、人生においても楽器を極めるということにおいても、つねに「より良い自分」にバージョンアップしようとすることは一緒だと思います。もちろん、それがうまくいく時もあれば、いかないこともあるけど、不断の努力をすることが大切なのかなと思います。

―「自分と向き合う」ということでいえば、スウェーデンは白夜があって家にいる時間も長く、自分と向き合う機会が多いのではないでしょうか。クラフトマンシップを持つ人が北欧に多いのも、そこに起因しているとよく言われますがどう思いますか?

ヘンリック:僕も、それは無関係じゃないと思いますね。加えてスウェーデンにはクワイアの伝統もあるし、9歳の時から学校で楽器を一つ選び、それを学ぶということを教育制度の中に取り入れているんです。楽器がうまい人が多いのはそれも関係しているんじゃないのかなと。

Edited by Aiko Iijima

 
 
 
 

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