ダーティ・ループスと亀田誠治が語る、「誰とも似ていない音楽」を作り出すための信念

 
亀田が感嘆する隠し味を入れたサウンド作り。3人が今傾倒する音楽とは?

―亀田さんは、ヘンリックのベースについてはどんな見解をお持ちですか?

亀田:彼のベースは本当にカラフル。素晴らしいテクニックとグルーヴを持っているし、楽曲に貢献していく上で色んな側面を持っていると思います。例えばジャコ・パストリアスからの影響も感じるし、かと思えばファンキーな曲ではロッコ・プレスティア(タワー・オブ・パワー)をも彷彿とさせる。一方ではマーカス・ミラーのような、洗練された音色で楽曲を盛り上げていく瞬間もあって。

彼の得意技であるスラップ奏法は、ベーシストによってはテクニック至上主義みたいなところに行きがちなんですけど、ヘンリックの場合はスリーピースのアンサンブルで、時にリズム楽器として、時にメロディ楽器として縦横無尽に世界を広げている。僕も30歳若かったらもう一回出直して、ヘンリックのようなプレイをしたいなと思いますね(笑)。

ヘンリック:あははは。ただ、自分がダーティ・ループスで披露しているベースラインは、ジョナとアーロンのおかげなんです。3人のインタープレイが、自分の中からああいうベースラインを「導き出す」というか。彼らのワイルドなアイデアによって、他のアンサンブルで演奏する時とは全く違うことがダーティ・ループスでは起きるんです。自分にとってのコンフォート・ゾーン、つまり安全地帯から一歩足を踏み出せるのは、この2人がいるからだと思いますね。

亀田:素晴らしい。ベースプレイに関しては、ジョナやアーロンから「こういうふうに弾いてほしい」みたいなリクエストもあるんですか?

ヘンリック:今回、アーロンとは一緒にベース・フレーズを考えたこともあったし、曲によっては彼が書いたフレーズを僕が弾くこともありました。ジョナもシンセベースを演奏したし、シンセのフレーズが低音部分を担う上で、ベースがメロディックに動くこともあって。ドラムやシンセとの絡み方によってもベースの役割がどんどん変わっていきましたね。

亀田:なるほど。じゃあ「Coffee Break Is Over」はシンセベースなのかな。



ヘンリック:あれはジョナが弾いたシンセベースの上から、僕のベースをオーバーダビングしています。あの曲はそれがはっきりわかると思うんですけど、他の曲でも同じようなことをやっていることが多くて。ミックスダウンで、その音量バランスは調整していますね。

亀田:そういう隠し味的なアプローチをいろいろしているんだね。あと、僕は「Old Armando Had A Farm」という曲でのジャズを含めたアメリカーナの解釈を、3人だけでやり切っていることに衝撃を受けました。こんな楽しい音楽をコロナ禍に聴けるなんて本当に幸せだと思いましたし、最近はずっとこの曲を車の中でリピートしていますね(笑)。

ヘンリック:嬉しいです。朝ドライブしながらスラップ奏法のブルーグラスを聴くのは最高でしょう?(笑)



―ちなみに今、皆さんはどんな音楽を聴いているのですか?

ヘンリック:僕は今、セルゲイ・ラフマニノフにハマってます(笑)。

アーロン:僕はフェルッチョ・ブゾーニが編曲したバッハのオルガン曲をよく聴いていますね。対位法に興味があって、自分のプレイにそれを取り入れたいのもありますが、何よりオルガンのサウンドが好きなんです。

ジョナ:ラフマニノフとバッハは僕も大好きですが、今はマイクロトーン(微分音)に興味があって。西洋の12音階ではなく、それ以上の音階を感じることによって、自分のボーカルにも大きな影響を与えることに気づいたんですよね。


ジョナ・ニルソン(Vo,Key)

亀田:クラシックから現代音楽まで幅広く聴いて、それがまたダーティ・ループスの音楽にフィードバックされていくわけですね。楽しみだなあ。

Edited by Aiko Iijima

 
 
 
 

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