「おバカでセクシーな女の子」の代名詞が変貌 Z世代が憧れる「Bimbo」とは?

Z世代のBimboは反資本主義?

おそらくとくに驚愕なのは、Z世代のBimboが反資本主義だという点だ(まさしく、チュラペッカさんも自身のTikTokに#ihatecapitalism(資本主義なんて大嫌い)というハッシュタグを多用している)。もちろんこの場合、皮肉の香りがプンプンする。Bimbo美学はいろいろな意味で消費文明の価値観の上に成り立っているからだ。TikTokでは@fauxrichで通っているセリーナさんも言うように、「フェミニズムを極めるにはお金がうんとかかるの。メイク代だってそう。化粧下地でしょ、アイラーナーでしょ、つけまつげでしょ。それにヘアメイク、ネイル、お洋服。豊胸、ボトックス、美容手術と、何千ドルもかかるのよ」

だが、Bimbo化現象はSephoraで40ドルの化粧下地を買えるどうかより、むしろ心のありかただと大半のBimboたちは言う。「Bimbo美学が消費文明に根付いていて、お金やモノがすべてだとしても、自分たちはそれとは真逆の方向にもっていこうとしている」と言うのは、プリンストン大学で宇宙機械工学を学ぶ19歳のグリフィン・マックスウェル・ブルックスさん。「現代のBimbo美学は、どちらかというと精神的なもの。『自分が着たいものを着て、素敵な自分になりたい、他人の期待に迎合しない』という考えをもつこと」 。ブルックスさんはTikTokで、キラキラメッシュのトップスに大ぶりのイヤリング、ジュエルトーンに染めた髪に、目もくらむようなコンバットブーツを合わせていく。チュラペッカさんとともにブルックスさんもTikTokのBimboムーブメントの非公式リーダーで、10月にBimbo美学を語る動画が広く話題になった。「Bimboは派手とか、世間知らずとか、宇宙っぽいというだけじゃなく、チープとラグジュアリーが交差するところに存在する」と動画の中で本人はこう語る。「Bimboになるには世俗的な煩悩や人間関係を手放し、けばけばしくも孤独なライフスタイルを選ばなくてはならない」

動画でBimboという単語を使ったことで、当初ブルックスさんの元には批判の声もいくつか寄せられた。中には、本人が典型的な女性像をネタにして女性をバカにしている、と考える者もいた。自称ノンバイナリー、男女どちらの性にも属さないと自認しているブルックスさんは、そんなつもりはなかったという。彼(彼女)にとってBimbo化とは、性別やセクシュアリティにまつわる従来の考え方を覆す手段なのだ。「ゲイのコミュニティにも、実はホモ嫌いだという人は相当いる」と本人。「当時、こうした超フェミニンな美学を取り入れた際に苦労したことのひとつは、こういう格好をして一部のゲイの男性に好かれなくなってもいいんだ、と認めることだった」。自分にとってのBimbo化は「男性が惹かれるものに迎合して行動するのではなく、自分の好きな恰好をすること。最初は男性の視線を釘付けにするためだったとしても、自分たちはそうじゃない」

Translated by Akiko Kato

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