ジェイコブ・コリアーが語る、音楽家が新しい世界に飛び出すための方法論

ジェイコブ・コリアー(Photo by Dyan Jong)

11月27日に日本盤がリリースされる最新作『Djesse Vol. 3』が、第63回グラミー賞の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を含む3部門にノミネートされたジェイコブ・コリアー。ここではWeb先行公開した箇所も含む、「Rolling Stone Japan vol.12」(2020年9月25日発売)に掲載したインタビューの完全版をお届け。コロナ禍におけるクリエイターの新しい方法論と、2020年を代表するアルバムの制作背景に迫る。聞き手はジャズ評論家の柳樂光隆。



魔法のように高度な音楽理論と、突拍子もないアイデアを組み合わせてしまうジェイコブ・コリアー。アカペラの多重録音に楽器演奏も自らこなし、ベッドルームからのYouTube配信で名を馳せた彼は、ここ数年で世界観を広げるように大物たちとコラボを繰り広げ、ジャンルを超えた快進撃を見せてきた。それはコロナ以降も変わらず、最新アルバム『Djesse Vol.3』を発表し、いくつものリモート・ライブを実施。自宅に籠っているとは思えないアクティブさで話題を提供し続けている。この状況下に「音楽の化身」は何を考えていたのか。


ジェイコブ・コリアー
1994年生まれ、ロンドンを拠点に活動中。様々な楽器を操るシンガー/作曲家/プロデューサーとして、2度のグラミー賞に輝いている天才マルチ・ミュージシャン。2011年から多重録音のアカペラと楽器演奏による動画を自宅のベッドルームからYouTubeで配信すると、クインシー・ジョーンズの目に留まり2016年にデビュー。一躍スターとなり、ハービー・ハンコック、ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムスなどと共演/コラボを果たす。


―もともと『In My Room』(2016年の1stアルバム)で活動していたあなたはそこから飛び出して、『Djesse』プロジェクトで誰も見たことがない壮大な世界を描いてきました。それがCOVID-19により移動が制限され、また『In My Room』に戻らなければならなくなった。でも、最近の活動を見ていると、ロックダウンで家に閉じ込められているのに、なぜか不自由そうに感じなかったんですよね。

ジェイコブ:その通り。人生で初めてツアーに出て、それにようやく慣れてきたところで、今度はまた部屋に戻れと言われ、とても不思議な感じだった。でも、このロックダウン期間はやり忘れていたクリエイティブなことに取り組む良い機会になったんだ。僕の中にはやりたいことはいっぱいあって、でも一日中走り回っている時は座って頭で考えるだけで、実行できなかった。今はすぐに実行できるんだ。

―まず最初に何をしたんですか? イギリスでは3月23日からロックダウンが始まったと思いますが。

ジェイコブ:欧州/USを廻る10〜11週間のツアーが始まることになっていて、3月27日からリハの予定だったけど、すべてキャンセルになった。『Djesse Vol.3』は当初3月末にリリースする予定だったけど、最終的には8月まで時間をかけて完成させることができた。僕としてはミキシングやプロデュースに十分な注意を払うことが出来たし、さらに新曲を書き、大好きなコラボレーションも追加できた。それはすごくありがたかったね。他にもNPRの「Tiny Desk (Home) Concert」や、Jimmy KimmelやJules Hollandといった番組のためにビデオを作ったり、マスタークラスで教えたり、『TED』用に家から生配信したり、音楽を作ったり……いろんなことを考えて、いろんなことを楽しんだよ。


2020年7月、米公共ラジオ局NPRの「Tiny Desk (Home) Concert」に出演。ロンドンの自室から、4人のジェイコブによる多重演奏が届けられた。

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